・道東海域(図1-①)と三陸沖海域(図1-②)の6~7月の海面水温は、黒潮続流の北偏や親潮の後退に加え、北日本では1946年の統計開始以来で気温が最も高かったため、広範囲で近年(2011~2020年)より4~8℃も高い海洋熱波の状態が続いた(図1b)。
・一方、黒潮続流は2022年後半から北上が顕著になり2023年6月には40°Nを越えた。これは海上保安庁発行の海洋速報の黒潮流軸データがある1955年以降では最北の記録であり現在も続いている(図1、2)。
・三陸沖海域の近年偏差については、「2023年上半期のわが国周辺の漁海況の特徴について」で解説したように2023 年5月下旬に最高を更新した。道東海域でも近年偏差がこれまでの最高であった2022年7月下旬の+3.0℃を超える+3.3℃を2023年6月下旬に記録し、その前後も含めて約2カ月にわたって約+3.0℃の高偏差が維持されている(図2)。
・道東海域の「気象庁のNEAR-GOOS地域リアルタイムデータベース」による7月中旬の観測線Aにおける水温・塩分の鉛直分布(図3)は、41°N以南では表層~100m以深も10℃以上、塩分33.8以上の高温高塩分の黒潮系暖水がみられた。
・一方、41°N以北の下層は、親潮第2分枝から42°N付近(図3-①)に暖水渦W(図1)の南側に沿って引き込まれたと思われる中心部の水温3℃以下、塩分33.2以下の低温低塩分水がみられ、黒潮続流からの暖水渦Wへの波及暖水と思われる高温高塩分の水塊(図3-③)をはさみ、沿岸(図3-②)でも親潮第1分枝と思われる低温低塩分水がみられた。また、三陸沖でも7月下旬の観測で、親潮由来と思われる低塩分の水塊が観測された。
・上記のように下層には部分的ではあるが低温低塩分の親潮系水が分布しており、台風等による大しけで混合が起これば、海域によっては海面まで冷水が現れる可能性がある。しかし、三陸~道東海域の海面水温は、黒潮続流の北偏が続いており、暖水渦への暖水波及もみられるため、今後1か月程度は近年より高めで推移すると思われる。
(海洋事業部)