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2023年06月29日
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vol.1209 記事一覧

5月のマイワシ・さば類・マアジの漁況について

1. 太平洋側のマイワシについて

石巻港:5月の水揚量は13,123トンで、前月・前年を上回った(表1)。価格も前月・前年を上回った。石巻付近の定置網の魚種別水揚量の第1位は、前年12月以降マイワシとなったが、5月もマイワシが第1位であった。石巻湾の定置網の漁獲物は、2日は体長15cm、体重35gモードの1歳魚主体、10日は体長16~22cm、体重40~90gモードの中型大型群(2~4歳魚以上) 主体に小型魚(1歳)が混じった(前年同期とほぼ同様、図1, 2)。4月よりも大型魚(産卵後の北上群と思われる)の割合が増えた。

銚子港:5月の水揚量は約22千トンで前月・前年を下回った(表2)。価格は前月・前年を上回った。常磐犬吠海域のまき網の漁獲物は、4月より成長し、体長17~19cm、体重60~90gの中型群(2~4歳魚)主体に、体長21cm以上、体重100g以上の大型群(ニタリ、4歳以上)が混じった(図3. 4)。4月同様に、前年よりやや大型で、三陸南部の定置網で見られた1歳魚はほとんど認められなかった。5月のまき網漁場は主に常磐~犬吠海域に形成されたが、5月下旬には金華山沖にも形成され、前年より北上が早かったが、黒潮続流の北偏による三陸南部~常磐海域に生じた海洋熱波が影響した可能性がある。また、まき網の1隻1操業日当たり漁獲量は前年より少なかった。

2. 日本海側のマイワシとウルメイワシについて

境港:5月のマイワシの水揚量は749トンで前月・前年を大きく下回った(表3)。価格は前月・前年を上回った。まき網の漁獲物は、前月同様に体長18cm、体重70gモードの中小銘柄(1歳魚)主体に、体長19cm、体重90gモードの中銘柄(2歳魚)とそれ以上が混じった(図5, 6)。前年同期の隠岐海峡の組成よりやや大きかった。ウルメイワシの4月の水揚量は488トンであった。

3. 太平洋側のマサバについて

石巻港:5月の水揚量は3.498トンで、前月を大きく上回り、前年を下回った(表4)。前月を上回ったのは、マサバ群が北上したためと思われる。また、前年を下回ったのは、黒潮続流の北偏による三陸南部~常磐海域に生じた海洋熱波の影響と思われる。価格は前月・前年を上回った。

銚子港:5月の水揚量は204トンで、著しい不漁だった前月・前年をやや上回った(表5)。近年、マサバの北上期におけるまき網の漁場形成は不安定であるため、秋季の南下期までは常磐海域での漁場形成は期待薄である。価格は前月・前年を上回った。

4. 東シナ海・日本海側のさば類について

松浦港:5月のさば類の水揚量は894トンと前月・前年を下回った(表6)。価格は前月並みで前年を下回った。大型まき網は対馬海域と東シナ海中南部海域主体に操業し、九州西沖海域でも操業した。大型まき網による対馬海域の5月のマサバ漁獲量は前年を上回り、過去5年平均並みであった。5月の東シナ海中南部のマサバ漁獲量は前年および過去5年平均を下回った。対馬海域(山口県沖を含む)で漁獲されたマサバは、体長(尾叉長)28cm、体重260gモードの1歳と体長31cm、体重320g以上の大型魚(2歳魚以上)で構成され、1~4月よりも大型魚が増加した(図7、8)。東シナ海中・南部海域の体長・体重組成は対馬海域と同様だが、大型魚の割合が高かった。

境港:5月のマサバの水揚量は5,554トンで前月・前年を上回った(表7)。価格も前月・前年を上回った。まき網により漁獲されたマサバは、隠岐海峡では体長31~36cm、体重440~740gの2、3歳魚が主体(4月同様)であったのに対し、浜田沖では体長26cm、体重240gモードの1歳魚主体に2歳以上が混じった。前年の隠岐海峡の組成は浜田沖と同様であった(図9、10)。

5. 東シナ海・日本海側のマアジについて

松浦港:5月の水揚量は2,270トンで、前月を上回り、前年を下回った(表8)。価格は前月を下回り、前年を上回った。大型まき網の漁場は、対馬海域と東シナ海中・南部海域を主体に、九州西沖海域にも形成された。大型まき網による対馬海域の5月の漁獲量は前年を下回り、過去5年平均を上回った。大型まき網による東シナ海中・南部海域5月の漁獲量は前年および過去5年平均を下回った。対馬海域の漁獲物は、体長(尾叉長)22cm、体重220gモードの2歳魚が主体で、体長18cm、体重100gモードの1歳魚が加わった。(図11, 12)。東シナ海中・南部海域の漁獲物は体長27cm、体重300g以上の3歳魚以上が主体であった。

境港:5月のマアジの水揚量(4~6月はマルアジを含む)は1,119トンで、前月を上回り、好漁だった前年を大きく下回った(表9)。価格は前月・前年を上回った。

6. まとめと今後の動向

太平洋側の5月のマイワシ漁場は、主に常磐~犬吠海域に形成され、下旬には金華山沖にも形成された。群れサイズは前年より小さいと考えられた。マイワシの生殖腺が縮小したことから、産卵期が終わり北上を開始したと考えられる。これに伴い、6月は三陸沖の漁獲量が増加し、常磐海域の漁獲量は減少すると見込まれる。境港の5月の水揚量は、4月に引き続き前年を下回った。山陰海域の6月のまき網の主対象はマイワシからマサバなどに狙いとなると見込まれるが、さば類の割当量が不足しているとの情報があり、マイワシの6月の水揚量は不透明である。

近年、太平洋側のさば類北上期におけるまき網漁場形成は不安定であり、5月の石巻港と銚子港の水揚量は低調であった。6月も三陸海域では高水温が続くと予測されるため、さば類主体の漁場形成は期待薄である。5月のさば類の水揚量は、境港では前年を上回ったが、東シナ海では前年並みであった。6月の東シナ海と山陰海域の水揚量は、例年5月を下回るため、期待薄である。

5月の東シナ海と山陰におけるマアジの水揚量は、前年を下回った。6月は両海域とも例年5月を下回るため、期待薄である。

(水産情報部)

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