3月の漁場はカツオ極小主体で南西諸島周辺に集中した(図1a)。近年、春先は南西諸島が主漁場となっているが、この理由は、水揚港にも近く、安定した漁獲が見込めるためとみられる。また、本年は小笠原周辺でも隻数は少ないものの漁場が形成され、徐々に北上し、下旬には遠州灘から伊豆半島周辺でもカツオ極小主体の漁獲があった。前年同月は、伊豆・小笠原ルートを北上すると思われるカツオ極小の群れを狙った操業がほとんどなかったが(図1b)、本年は少ないながらも漁獲があった。このルートを北上するカツオの来遊量が前年よりは多いとみられる。黒潮大蛇行は本年も継続しており、伊豆諸島周辺の黒潮流路が本年は伊豆半島より西を北上したため、カツオの北上ルートの水温が3月は20℃程度まで上昇した(図2)。このため、カツオが伊豆半島周辺まで北上しやすい海洋環境だったとみられる。
3月の全国の釣りによる生鮮カツオ水揚量は1,655.4トンで(図3)、前年同月比86%、過去5年平均比95%だった。1月から3月末までの累積水揚量は、3月上旬は千葉県勝浦港が最も多かったが、鹿児島港への水揚げが継続したことから、3月中旬頃から鹿児島港が最多となった(図4)。1~3月の累計水揚量は鹿児島港が1,267.4トン、千葉県勝浦港が624.6トン、御前崎港が44.3トンだった。全国平均価格は420円/kgとなり、前月をやや下回ったが、前年・過去5年平均を上回った(図5)。まき網による3月の水揚量は竿釣りより少ないが、長崎県松浦港に27トンで、前年・過去5年平均を大幅に上回り、価格は436円/kgだった。
近年、4月までは南西諸島周辺に漁場が集中する傾向があるが、5月以降は四国~千葉の沿岸・沖合に漁場が移動する。本年は伊豆諸島南部の海面水温が前年より高いため、伊豆・小笠原ルートのカツオが北上しやすい海況にある。今後6月にかけて伊豆~房総周辺で漁場が形成される見込みだ。
(水産情報部)