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2023年04月26日
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vol.1191 記事一覧

令和5年2~3月の海況について

1.2月の親潮・混合域の海面水温

2月上旬(図1):道東の南東沖の暖水塊は北へ拡大した。道東の南沖の暖水塊は東へ移動した。黒潮続流からの暖水の北上が強まり、釜石東沖で14℃台の暖水が出現した。

2月中旬(図2):親潮第一分枝からの冷水の南下が弱まり、青森県東沖で昇温した。黒潮続流からの三陸沖への暖水の波及は弱まり、三陸沖の黒潮系暖水はおおむね10~13℃で、局所的に14℃台が分布した。常磐沖を北上する黒潮続流は金華山に近づき、宮城県周辺で顕著に昇温した。

2月下旬(図3):釧路・厚岸南方で冷水が南下し、1℃以下が拡大した。三陸北部周辺で親潮からの冷水が拡大し降温した。宮城県沖の黒潮続流と混合域との間の潮境はやや北へ移動した。黒潮続流の南への蛇行部分は南へ移動し冷水が南下した。

2.2月の黒潮域の海面水温と黒潮流路

2月上旬(図1):22℃以上は九州東沖まで北上し、四国~潮岬沖は20~21℃、潮岬~伊豆諸島は20℃、伊豆諸島北部~房総南東は19℃で、昇温した海域もあった。黒潮流軸はトカラ海峡で緩やかに蛇行し、都井岬に接岸後、四国沖を離岸して大王埼南沖の29~30°Nで蛇行した。黒潮流軸は、三宅島付近を通過した後、房総半島沖で緩やかに蛇行して仙台湾沖付近まで北上した。黒潮内側域では遠州灘~熊野灘に暖水の反流があったほか、土佐湾にも暖水が波及した。

2月中旬(図2):22℃以上は南西諸島沖まで後退し、九州~四国は20~21℃、潮岬~伊豆諸島西沖は20℃に降温した。伊豆諸島北部~房総南東沖は19℃で停滞気味であった。黒潮流軸は、都井岬~足摺岬に接岸後、四国沖を大きく離岸して大王埼南沖の29~30°Nで蛇行した。黒潮流軸は、石廊崎沖で緩やかに屈曲し、三宅島~御蔵島を通過した後、房総半島沖で蛇行して仙台湾沖付近まで北上した。黒潮内側域では遠州灘~熊野灘~潮岬付近に暖水の反流があった。

2月下旬(図3):22℃以上はトカラ海峡を越えて屋久島南隠岐までやや拡大した。九州~四国は20~21℃、潮岬~伊豆諸島西沖は20℃、伊豆諸島北部~房総半島南東沖は19~20℃でおおむね2月中旬並みであった。黒潮流軸は、都井岬に接岸し、足摺岬~室戸岬は離岸傾向であった。黒潮流軸は、潮岬では引き続き離岸し、大王埼南沖の29~30°Nで蛇行して御前崎沖で屈曲して接岸した。その後、三宅島~八丈島を通過し、房総半島沖で蛇行して仙台湾沖まで北上した。

3.2月の日本海の海面水温

2月上旬(図1):5℃以下の冷水は朝鮮半島北部沖で、わずかに拡大したが、他の海域では大きな変化はなかった。10℃以下の水帯も対馬暖流沿いの分布に大きな変化はなかった。15℃以上の暖水も前期と同様に対馬付近に停滞した。対馬暖流は鬱陵島の北沖から、山陰地方を大きく離岸して東流し、小さく蛇行して大和堆付近を通過した後、若狭湾北沖・佐渡島北沖・男鹿半島沖でそれぞれ小さい蛇行を繰り返して、津軽海峡方面に流去した。

2月中旬(図2):5℃以下の冷水はロシア沿海地方沖でわずかに拡大したが、その他の海域は停滞した。10℃以下の水帯も、津軽海峡付近で後退したが、全体に停滞。15℃以上の暖水も対馬付近に停滞した。対馬暖流は鬱陵島の北沖から小さく蛇行して大和堆付近を通り、若狭湾北沖で前期よりも小さく蛇行し、佐渡島北沖・男鹿半島沖で小さく蛇行して津軽海峡方面に流去した。

2月下旬(図3):5℃以下の冷水は、朝鮮半島北部沖~ピョートル大帝湾沖では40°N以南まで拡大し、北海道でも積丹半島付近まで拡大した。10℃以下の水帯は沿岸では男鹿半島沖まで拡大し、沖合でも若狭湾北沖や山陰西部沖で拡大が進んで38°N付近まで南下した。15℃以上の暖水は対馬付近に停滞した。対馬暖流は朝鮮半島付近では流軸が不明瞭となり、山陰西部隠岐では流軸が南下して接岸し、隠岐諸島西沖を北上して大和堆付近を通過後、若狭湾北沖で蛇行した。北陸沖では離岸して男鹿半島付近に接岸後、津軽海峡方面に流去した。

4.3月の親潮・混合域の海面水温

3月上旬(図4):道東周辺でやや降温し、0℃以下が拡大した。親潮第一分枝からの冷水域が拡大し、5℃以下の冷水が釜石沖に接近した。黒潮続流からの暖水の波及が金華山に接近し、この付近で顕著に昇温した。黒潮続流からの暖水の北上が顕著で、13℃台の暖水が40゚N付近まで北上した。

3月中旬(図5):道東沿岸は昇温して0~2℃。道東沖に暖水渦が発達し、渦に取り込まれた6℃台の暖水が北上し顕著に昇温した。三陸東沖で暖水の北上が顕著で、八戸東沖に11℃台が出現した。親潮第二分枝から続く6℃以下の冷水は西側の暖水渦に取り込まれて西へ拡大した。黒潮続流の北へ蛇行した部分のすぐ北側にあった冷水塊が南へ移動して顕著に降温した。

3月下旬(図6):親潮第二分枝に沿って冷水域が拡大して降温した。道東南方の暖水塊に取り込まれる形で暖水が北上し、13℃台が41°Nまで北上した。三陸南部周辺で黒潮続流からの暖水の波及が顕著となり、昇温した。

5.3月の黒潮域の海面水温と黒潮流路

3月上旬(図4):22℃以上はトカラ海峡付近まで後退した。九州沖は21℃、四国~潮岬~伊豆諸島西沖は20℃、伊豆諸島北部~房総半島南東沖は18~19℃前後でやや降温した。黒潮流軸は都井岬では離岸傾向になり、足摺岬にやや接岸した後、室戸岬では離岸し、潮岬では引き続き離岸した。黒潮流軸は、大王埼南沖の29~30°Nで蛇行し、御前崎沖で緩やかに屈曲して接岸した。その後、三宅島付近を通過し、房総半島を離岸して常磐沖でゆるやかに蛇行して仙台湾沖まで北上した。黒潮内側域では遠州灘~熊野灘沿岸に暖水が波及した。

3月中旬(図5):22℃以上は九州東沖まで北上し、四国~潮岬沖は21℃、伊豆諸島西沖~伊豆諸島北部は20℃、房総半島南東沖は19℃前後に昇温した。黒潮流軸は都井岬では離岸し、足摺岬~室戸岬沖で屈曲してやや接岸した。黒潮流軸は、大王埼南沖の29~30°Nで蛇行して御前崎沖で緩やかに屈曲して接岸した。その後、三宅島~御蔵島付近を通過し、房総半島にはやや接岸して常磐沖を北東進して仙台湾沖まで北上した。黒潮内側域では遠州灘~熊野灘沿岸に暖水が波及した。その他、九州東岸でも暖水が波及した。

3月下旬(図6):23℃以上が九州南東沖まで北上し、九州~四国~潮岬沖は22℃、伊豆諸島西沖~伊豆諸島北部は20~21℃、房総半島沖は20℃前後で緩やかに昇温した。黒潮流軸は都井岬では離岸し、室戸岬沖でゆるやかに屈曲して潮岬は引き続き離岸した。その後、熊野灘南沖の29~30°Nで蛇行して大王埼沖で緩やかに屈曲し、遠州灘に接岸した。黒潮流軸は、三宅島~御蔵島付近を通過した後、房総半島にはやや接岸して常磐沖を北東進して仙台湾沖まで北上した。黒潮内側域では室戸岬~紀伊水道沖で暖水が波及した。

6.3月の日本海の海面水温

3月上旬(図4):5℃以下の冷水は朝鮮半島北部で北に後退したが、他海域ではほぼ停滞していた。10℃以下の水帯は広く停滞し、山陰の北沖や佐渡島の北沖では対馬暖流に沿うように分布した。15℃以上の暖水は対馬付近で停滞した。対馬暖流の流軸は隠岐諸島の西から北上し、大和堆付近を通過した後、若狭湾北沖と佐渡島北沖で小さく蛇行した。その後、北陸沖を離岸東流し、津軽地方付近に接岸して津軽海峡方面に流去した。

3月中旬(図5):5℃以下の水帯は朝鮮半島北部で40°N付近まで南下拡大したが、他海域ではほぼ停滞していた。10℃以下の水帯は広く停滞した。15℃以上の暖水も対馬周辺で、停滞気味だった。対馬暖流の流軸は隠岐諸島に接近して北上した。その後、大和堆付近を通過し、若狭湾の北沖・佐渡島北沖でそれぞれ小さく蛇行して東流し、津軽地方に接岸した後、津軽海峡方面に流去した。

3月下旬(図6):5℃以下の水帯は、朝鮮半島北部とピョートル大帝湾沖で41°N付近まで南下したが、ロシア沿海地方沖では北西にわずかに後退して縮小した。10℃以下の水帯は大きくは変動せずおおむね停滞した。15℃以上の暖水は、朝鮮半島沿岸では37゚N付近、山陰沿岸では島根半島近くまで拡大した。対馬暖流の流軸は隠岐諸島に接近した後、S字状に蛇行して北上し、大和堆付近を通過した。その後、若狭湾北沖や佐渡島北沖及び男鹿半島西沖で、小さく蛇行を繰り返しながら東北東に流れ、津軽海峡方面に流去した。

7.黒潮続流北偏に伴う東北海域の海面水温

3月下旬の海面水温は、日本海および太平洋南部~道東沖合にかけて前年よりも高い状態であった(図7)。3月は全般的に気温が高かったことも影響しているが、常磐~道東沖合においては黒潮続流が金華山沖まで北上していること、また黒潮続流から波及する北上暖水の影響も大きい。

1982~2023年における3月下旬の海域別海面平均水温を見ると、2015年頃から上昇傾向となっていることがわかる(海域区分は図9参照)。特に今年は常磐北部、三陸南部、道東沖において、過去最高となっており、また常磐南部においては2011年に次ぐ過去2番目に高い状態である。春に北上するマイワシやサバなどの浮魚類の北上時期が速くなるなど、影響が出る状況である。

(水産情報部・海洋事業部)

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