トピックス

2023年3月1日
トピックス一覧
最近の水産の話題はこれ! 随時更新
vol.1178 記事一覧

2022年10~12月の主要魚種の水揚量・市況動向

1.JAFIC調査港における主要魚種の動向

JAFICが調査している全国主要117港における2022年10~12月の調査対象全魚種の合計水揚量は44万5千トンで、前年同期(48万3千トン)の92%であった(表1)。1~12月の累計水揚量は180万トンで、前年同期(194万5千トン)の93%と過去20年間で最低となった。10~12月の平均価格は321円/kgで、前年同期(245円/kg)の131%であった。月別にみると、10~12月を通じて前年同月を上回る価格で推移した。1~12月の平均価格は245円/kgで、前年同期(197円/kg)の125%と2017年以降で最高価格であった。

水揚げがなかったギンザケ(養殖)を除く主要47魚種の10~12月の魚種別の合計水揚量と平均価格を前年同期と比較した(表2、図1)。なお、水揚量・価格ともに「前年同期並み」とあるのは増減率 0~5%の場合を示す。

今期の水揚量は、冷凍カツオやマダイ(天然)、キンメダイなど15魚種が前年同期を上回り、ブリや生鮮キハダなど5魚種が前年同期並み、さば類やマダラ、クロマグロなど27魚種が前年同期を下回った。平均価格は、マイワシや生スルメイカ、ハマチ(養殖)など36魚種が前年同期を上回り、さば類、生鮮キハダなど4魚種が前年同期並み、マアジやかれい類など7魚種が前年同期を下回った。10~12月は前年と比較すると全般的に高値基調であった。

2.産地市場における代表魚種の動向

産地市場において水揚量の多いマイワシとさば類および養殖魚の代表としてマダイについて10~12月の動向を検討した。

1)マイワシ

水揚量は10~12月を通じて前年同月を下回った(図2)。10~12月の合計水揚量は8万7千トンで前年同期の80%にとどまった。価格は10月が54円/kg(前年比135%)、11月が81円/kg(前年比156%)、12月が96円/kg(前年比178%)であった。水揚げが低調だったことに加え、ミール価格の高騰を反映し、前年および過去5年平均を上回って推移した。また、貿易統計(財務省)によると、冷凍マイワシの輸出量は、10月が4千800トン(前年比137%)と前年を上回ったものの、水揚げが低調だったこともあり、11月は3千100トン(前年比75%)、12月は 2千200トン(前年比48%)にとどまった。平均輸出単価は、10月が 105円/kg(前年比114%)、11月が 95円/kg(前年比131%)、12月が 88円/kg(前年比108%)と前年を上回って推移した。

2)さば類

水揚量は10~12月を通じて前年同月を下回った(図3)。10~12月の合計水揚量は6万5千トンで前年同期の59%にとどまった。価格は10月が113円/kg(前年比91%)、11月が118円/kg(前年比98%)、12月が166円/kg(前年比116%)であった。また、貿易統計(財務省)によると、冷凍さば類の輸出量は10月が8千600トン(前年比197%)、11月が6千600トン(前年比101%)と前年並み~上回って推移したものの、12月は5千700トン(前年比59%)にとどまった。平均輸出単価は、10月が158円/kg(前年比128%)、11月が156円/kg(前年比119%)と高値水準で推移したが、12月は139円/kg(前年比108%)と前年を上回ったものの11月の11%安であった。

3)マダイ(養殖)

水揚量は10~11月が前年を上回り、12月は前年を下回った(図4)。10~12月の合計水揚量は113トンで前年同期の106%であった。価格は10月が938円/kg(前年比149%)、11月が956円/kg(前年比133%)、12月が1,035円/kg(前年比133%)で、前年を上回った。年間を通じて高値を維持し、2022年3月以降は過去5年平均を上回って推移した。

3.東京都中央卸売市場における動向

東京都中央卸売市場の水産物の取扱数量と平均価格を表3に示した。数量は、10~12月を通じて前年同月を下回り、10~12月の合計数量は8万4千トンで前年同期の88%であった。1~12月の累計数量は32万3千トンで、前年同期(34万7千トン)の93%と過去20年間で最低となった。10~12月の平均価格は1,610円/kgで、前年同期(1,337円/kg)の120%であった。月別にみても、10~12月を通じて前年同月を上回る価格で推移した。1~12月の平均価格は1,363円/kgで、前年同期(1,138円/kg)の120%と2017年以降で最高価格であった。消費地市場においても高値水準を維持した。

次に、一般鮮魚・養殖魚・冷凍魚の代表として生鮮スルメイカ、生鮮カンパチ、冷凍キハダの3魚種について、東京都中央卸売市場における10~12月の動向を検討した。

1))生鮮スルメイカ

数量は10月が前年を大きく下回り、11~12月は前年並みであった(図5)。10~12月の合計数量は448トンで前年同期の70%にとどまった。価格は10月が1,140円/kg(前年比127%)、11月が1,186円/kg(前年比109%)、12月が1,290円/kg(前年比118%)で、産地価格の高騰を反映し、前年および過去5年平均を上回って推移した。12月は過去5年で最高価格であった。

2)生鮮カンパチ(養殖)

数量は10~12月を通じて前年同月を下回り、10~12月の合計数量は936トンで前年同期の78%であった(図6)。価格は10月が1,905円/kg(前年比142%)、11月が1,990円/kg(前年比138%)、12月が2,063円/kg(前年比129%)であった。産地価格の上昇を反映し、年間を通じて前年、過去5年平均を上回って推移した。

3)冷凍キハダ

数量は10月が前年をやや上回り、11月は前年を下回り、12月は前年を上回った(図7)。10~12月の合計数量は550トンで前年同期並みであった。価格は10月が1,259円/kg(前年比116%)、11月が1,364円/kg(前年比122%)、12月が1,210円/kg(前年比113%)であった。燃油価格の高騰や円安の影響で、相場は高水準を維持したとみられる。

4.まとめ

2022年10~12月は、産地市場では水揚量は前年同期を下回り、価格は前年同期を上回った。魚種別にみても、前年同期と比べて水揚げが低調な魚種が多く、全般的に高値基調であった。

貿易統計(財務省)によると、2022年10~12月の魚介類の輸入量は41万9千トンで前年同期(42万8千トン)並みであった一方、平均輸入単価は1,101円/kgで前年同期(908円/kg)の121%であった。ロシアのウクライナ侵攻や円安の進行により輸入水産物の価格が高騰したとみられ、産地市場において魚価が高騰した要因の一つと考えられる。

また、東京都中央卸売市場では、10~12月を通じて取扱数量が前年同月を下回り、価格は前年同月を上回って推移した。魚種別にみても、各魚種とも価格は高水準を維持し、産地価格の上昇に加え、燃油価格の高騰や円安などを反映したものとみられる。

一方、家計調査(総務省)によると、2人以上世帯の1世帯あたりの生鮮魚介類の購入数量は10月が前年比80.5%、11月が84.9%、12月が83.2%と10~12月を通じて前年を下回り、平均価格は10月が前年比116.7%、11月が112.3%、12月が114.9%と前年を上回って推移した。このことは、水産物の価格高を反映したものと考えられる。また、2人以上世帯の1世帯あたりの一般外食への支出金額は10月が2019年比107.7%、11月が90.6%、12月が88.3%とコロナ禍前を上回る月もあった。以前のような行動制限が課されなくなったことから巣ごもり需要が終わりつつあり、生鮮魚介類の購入数量が減少した1つの要因であるとも考えられる。

以上のように、産地市場、消費地市場ともに水揚量、入荷量が減少する一方で魚価高の状況が継続しており、今後も市況の動向を注視する必要があるだろう。

(水産情報部)

このページのトップへ
続きはこちらから