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2022年12月27日
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令和4年11月の海況について

北部太平洋や日本海北部の海面水温は、周期的な前線や低気圧通過の影響で降温が進んだが、三陸・道東沖の海面水温は近年(2011~2020年)より2~5℃高めの状態が続いた。

黒潮域

・黒潮大蛇行は11月も継続し、四国~潮岬沖では黒潮流路の離岸が続き、その変動は小さかったが、遠州灘沖では屈曲が発達し(図1-①)、房総半島南東沖では小蛇行(図1-B)が北上した。

・黒潮流軸の海面水温は、前月は黒潮続流域まで達していた25℃以上が四国沖まで後退し、九州~四国沖は24~25℃、潮岬沖~伊豆諸島~房総半島沖は24℃に降温した。

・遠州灘~熊野灘(図1-①)海面水温は、発達した屈曲部から暖水が波及したため、近年(2011~2020年)より1~2℃高めであった。

・四国沖の海面水温は、黒潮流軸が離岸し、潮岬沖は蛇行内側部の冷水渦の影響を受けたため、前月に引き続き近年よりやや低目であった。

・関東南東沖(図1-③)の海面水温は冷水渦の影響で近年より低めの海域が拡大した。

・沖縄東沖(図1-②)の海面水温は、平年より気温が高く風も弱かったため、近年よりやや高めの状態が続いた。

黒潮域の海面水温の前年差

・黒潮流路は四国沖や房総半島沖では前年とほぼ同じであったが、最南下部(図1-A)が前年より北偏する一方、北上部が東偏した影響で、最南下部の海面水温は前年より高め、伊豆諸島西沖は低めであった。

・関東南東沖(図1-②)の海面水温は、冷水渦の影響で、近年偏差同様やや低めであった。

・沖縄東沖(図1-②)の海面水温も近年偏差同様に高めであった。

親潮域・混合水域

・黒潮続流の流路は、房総半島南東沖の小蛇行が北上するとともに屈曲部が仙台湾沖に北上し(図1-B)、最北上部は39°N付近に達した。この屈曲部からは暖水が沿岸に波及しており、常磐北部~仙台湾付近の海面水温は近年より2~5℃高めであった。

・9月に続流から切り離された暖水渦(図1-D)は縮小しながら北西進し、道東沖の暖水渦(図1-F)は勢力を保ちながら西進した。

・前月は三陸沖にみられた津軽暖流の暖水渦(図1-C)は南下して消滅し、三陸沖の暖水渦(図1-E)も波及した暖水と一体化して消滅した。

・三陸沖~道東沖(図1-⑦)や道東東沖合(図1-⑧)の海面水温は、暖水渦や黒潮続流からの暖水波及の影響で近年より2~5℃高めの海域が広がった。

・親潮面積は平年(1993~2017年)よりかなり小さめで、親潮第1分枝は根室半島付近、第2分枝も暖水に阻まれて41°N・149°Eに停滞した。

・襟裳岬~下北半島沖(図1-⑥)の海面水温は、津軽暖流の暖水渦消滅と親潮系水の影響で、近年より低めの海域がみられたが、黒潮続流からの暖水に阻まれて親潮系水の南下は停滞した。

親潮域・混合水域の海面水温の前年差

・襟裳岬~下北半島沖(図1-⑥)の海面水温は、暖水渦が停滞していた前年と比べ、2℃前後低めであった。

・一方、沖合(図1-⑦、⑧)の海面水温は、前年も近年平均より高めであったが、北上した黒潮続流からの暖水波及が強まった影響で、前年よりさらに2~4℃高めの海域が広がった。

東シナ海

・気温が高く、平年より風が弱かった影響で、海面水温が低めの海域は縮小し、下旬にかけて高めの海域が拡大した(図1-⑩)。

日本海

・対馬暖流は、山陰西部沖の蛇行(図1-⑫)が安定し、大和堆付近を通過して男鹿半島沖で緩やかに蛇行した。

・対馬暖流の勢力は平年よりかなり強めの状態が続き、東朝鮮暖流域には暖水渦が停滞して、海面水温は近年より2~4℃高めであった(図1-⑪)。また、大和堆付近や津軽半島~北海道沖(⑬)の海面水温も暖水の影響で2℃前後高めであった。

・山陰(図1-⑫)の海面水温は、対馬暖流蛇行の影響で冷水の南下が継続し、近年よりやや低めの海域が広がった。

日本海の前年差

・ピョートル大帝湾沖(図1-⑭)の海面水温は、東朝鮮暖流が北東進した前年と比べ2~4℃低めであった。

・山陰沖の海面水温は、対馬暖流蛇行の影響で前年より低めであったが、北陸沖では対馬暖流北上の影響で高めであった。

親潮域・混合水域の高水温について

・11月も三陸沖海域~道東海域の海面水温は高く、近年より2~5℃高めの海域がみられた(図1-2)。

・11月の三陸沿岸海域と道東東沖合海域の海面水温の近年偏差は縮小傾向(図3)にあったが、三陸沖海域と道東海域では拡大(図3)した。特に三陸沖海域では、11月下旬の近年偏差が+3.3℃と秋季としては近年まれにみる高水温を記録した(図4)。

・11月の黒潮続流の流路は今回の大蛇行期間中11月としては最も北上しており(図2)、仙台湾沖と三陸沖海域の2か所の屈曲も停滞して三陸沖海域や仙台湾付近に暖水が波及しやすい海況であった。

・このため、元々海面水温の近年偏差が大きかった三陸沖海域にさらに黒潮系暖水が波及して記録的な高水温になったと考えられる。

(海洋事業部)

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