1)全国の生鮮スルメイカの水揚げ動向
JAFIC主要港における生鮮スルメイカ(全国)の2022年10月の水揚量は2,435トンで、前月及び前年同月をそれぞれ2割下回り(図1、表1)、2018~2021年の過去4年の10月平均3,811トンを4割下回った。
2022年1~10月の累計水揚量(全国)は13,593トンで、前年同期を7%上回った(図2、表1)。10月の水揚量と1~10月の累計について海域別に述べる。オホーツク海(稚内~羅臼を含む)は85トンで、10月水揚量および累計とも前年の1割強と低調であった。道東は178トンで、釧路は全量が沖合底曳網による漁獲で、釣りは花咲・厚岸で行われたものの低調であった。なお、前年10月は漁獲が皆無であった。襟裳岬以西の苫小牧・室蘭では釣りでややまとまったものの、累計では前年を2割下回った。青森太平洋側や岩手で昼いか釣り漁が継続したほか、八戸・宮古・石巻では漁獲量が落ち始めたものの、沖合底曳網主体に9月に引き続きまとまった漁獲があった。累計は対前年比で青森太平洋側・岩手とも6割増であった。一方、石巻では、11月に入ると漁獲の主体が例年どおりスルメイカからヤリイカに替わったこともあり、水揚量が伸びず累計は前年の16%減であった。
2)生鮮スルメイカの月別平均価格の推移
2022年10月の生鮮スルメイカの平均価格は998円/kgで、前月891円/kgの12%高、前年同月582円/kgの71%高であった。JAFIC調べによる2000年以降の最高価格は2016年11月の849円/kgであったが、これを約150円上回った(図3)。なお、八戸の小型いか釣りによる鮮魚向けとなる生鮮スルメイカの10月の水揚価格が1,132円/kgであったのに対し、干しスルメ等に加工される沖合底曳網の生鮮スルメイカの10月の水揚価格は1,360円/kgで、前月から300円/kg高騰した。
3)各地の漁場形成の特徴
①小型いか釣り
小型いか釣り船による10月の漁況は以下のとおり。壱岐諸島・対馬沖周辺(図4-A)では、ケンサキイカ主体にスルメイカ混じりで9月に引き続き低調な漁況であった。
小樽以北の日本海の漁場形成は皆無で、道南・山形・新潟・佐渡等で南下群の来遊がみられたが低調な漁況であった(図4-B)。道東沖も群が薄く、表面水温が高いこともあり、潜行群が多く漁獲は低調であった。津軽暖流が下北半島から噴火湾に波及したことから、苫小牧~噴火湾沿岸に漁場が形成され、前年同様にややまとまった漁獲がみられた(図4-B)。
②日本海中型いか釣り
10月の中型いか釣り船(船凍船)の主漁場は、前月同様に大和堆西~隠岐諸島北に形成された(図4-C)。1日1隻当たり0.2~2トンと船間差・日間差のある低調な漁況が続いた。1ヶ月半の航海で、1隻当たり3千~4千ケースと、例年のこの時期の1/2~1/3の水揚量しかなかった。10月の水揚量は700トンで、前月・前年同月を下回った(図5)。
魚体は1尾350~400g級の月齢10ヶ月以上の大型の個体が増え、前年同月同様に産卵後の皮イカが1%程度混じった。1~10月の累計は約3千トンで2019年並み、2021年の半分の水準であった(図6)。平均価格は8月以降、1,000円/kgを超えており、過去最高水準であった2019年11月の1,281円/kgに迫った(図7)。
日本海の中型いか釣りおよび道東~三陸の小型いか釣りのスルメイカ漁況は低調であったが、三陸の沖合底曳網では堅調であった。スルメイカの価格は国産原料不足を反映し、生鮮・冷凍とも過去最高水準となった。また、三陸~常磐で冬季に漁獲されるヤリイカが10年ほど前から増加傾向にあり、減少が続くスルメイカ資源の代替として、重要性を増している。また、中型いか釣りが夏季と冬季に漁獲するアカイカについて、従来の用途はロールイカ・珍味原料等が大半であった。アカイカの名称だと同名異種でソデイカやケンサキイカ、アメリカオオアカイカ(ペルーイカ)等と混同しやすいことから、業界内で流通名をムラサキイカに統一し、PRした。この結果、ムラサキイカの刺身・寿司ネタ等の生食の比率が増え、魚価が大幅に上昇した。年明けには、三陸近海で冬季ムラサキイカ漁が開始するが、好漁を期待したい。
(水産情報部)