海面水温は、北部を中心に前線や低気圧の影響で中~下旬にかけて降温が進んだが、三陸道東沖では引き続き近年(2011~2020年)より2℃以上高めの状態が続いた。
・大蛇行は10月も継続し、大王埼沖の屈曲部(図1-①)が切り離された。
・黒潮流軸は四国沖では離岸し(図1-B)、大王埼沖の30~31°N(図1-A)まで南下した後、三宅島~八丈島を通過して房総半島沖(図1-④)でも緩やかに蛇行した。
・黒潮流軸の海面水温は、9月は房総半島沖まで広がっていた28℃が30°N以南に後退し、九州~四国沖~潮岬沖は26~27℃、伊豆諸島~房総半島沖は26℃に降温した。
・四国沖の海面水温は、黒潮流軸の離岸、潮岬沖での黒潮内側域の冷水渦の影響で引き続き近年(2011年~2020年)よりやや低目であったが、熊野灘~遠州灘沖(図1-①)は黒潮屈曲部から切り離された暖水渦の影響で近年より1~2℃前後高めの状態が継続した。
・本州南方や小笠原周辺(図1-②)の海面水温は、日射量が多く平年より風が弱かったため、近年よりやや高めであった。一方、関東の東沖(図1-③)の海面水温は、風が強かった影響で、近年より低めの海域が拡大した。
・本州南方、小笠原周辺(図1-②)、伊豆諸島周辺(図1-④)の海面水温は、台風が通過せず、広範囲で1~2℃高めであった。
・遠州灘沖(図1-①)の海面水温は、黒潮流軸離岸の影響で、前年より1℃前後低めであった。
・黒潮続流流軸は、房総半島沖の蛇行(図1-④)の影響で常磐沿岸に張り出した(図1-⑤)。沖合では9月より北偏して37°N付近を東進した。
・9月に黒潮続流から切り離された暖水渦Dは北上したが、その北側の暖水渦Fはほぼ同じ位置に停滞した。
・津軽暖流の暖水渦Cや三陸沖の暖水渦Eもほぼ同じ位置に停滞したが、衰退傾向である。
・三陸沖~道東沖(図1-⑦)や道東東沖合(図1-⑧)の海面水温は、暖水渦や黒潮続流からの暖水波及の影響で、常磐沿岸~沖合(図1-⑤)の海面水温は、黒潮続流流軸張出の影響で近年より2~4℃高めであった。
・親潮面積は平年(1993~2017年)よりかなり小さめで、親潮第1分枝は根室半島付近、第2分枝も暖水に阻まれて41~42°N・149~150°Eに停滞した。
・襟裳岬沖(図1-⑥)には親潮系水が暖水渦Cや暖水渦Eに巻き込まれながら接岸し、海面水温が近年よりやや低めの海域がみられた。しかし、暖水に阻まれ、接岸や南下は弱かった。
・三陸沖(図1-⑥)の海面水温は、前年と比べて暖水渦Cの規模が小さく、その沖を親潮系水が南下したため、前年より2℃前後低めであった。
・一方、沖合(図1-⑦、⑧)の海面水温は、暖水波及の影響で前年より大幅に高く、2~4℃高めの海域が広がった。
・海面水温は、上旬は日射量が多く風も弱かったが、中旬以降は寒気と平年より風が強かった影響により、高めの海域は縮小し、低めの海域が広がった(図1-⑩)。
・対馬暖流は勢力が平年よりかなり強く、山陰西部沖では蛇行(図1-⑫)が安定し、津軽半島沖では蛇行が切り離されて(図1-⑭)接岸した。
・東朝鮮暖流域(図1-⑪)の海面水温は、暖水渦が発達したため、近年より1~2℃高めであった。
・日本海北西部(図1-⑬)の海面水温は、日射量が少なく平年より風が強かった影響で、近年より1~2℃低めの海域が広がった。
・山陰(図1-⑫)の海面水温は、対馬暖流蛇行の影響で冷水が南下し、近年より低めの海域が広がった。
・津軽半島沖(図1-⑭)や北海道沖の海面水温は、暖水渦の影響で2℃前後高めであった。
・日本海の海面水温は、日射量が少なく平年より風が強かった影響で、9月に引く続き大陸沿岸を中心に近年より2~4℃低めであった。
・三陸・道東海域の海洋熱波は11月上旬現在も続いており、海面水温が近年より2~5℃高めの海域が広がっている(図2)。
・道東および道東東沖合海域の海面水温は10月下旬~11月上旬に降温し、近年偏差がやや縮小したが、依然として+2~3℃高めであった(図3)。一方、三陸では近年偏差は11月上旬に上昇し、三陸沿岸海域は+0.7℃、三陸沖海域+1.6℃であった。
・しかし、津軽暖流の暖水渦Cは縮小し、三陸沖の暖水渦Eも沖に移動すると共に縮小しており、これらの2つの暖水渦の海面水温は近年より低めになった(図2)。
・これら海面水温が近年より低めの海域は襟裳岬沖に続いていた。気象庁のTESAC報データによると、11月上旬の金華山沖では水深50~100mに上下の層よりやや低塩分の層がみられたため、道東沿岸の親潮系水が周囲の高温・高塩分の水と混合して変質しながら南下した(図2の矢印方向)ものと考えられる。
・11月上旬の常磐北部~仙台湾では、黒潮続流流軸の小蛇行(図2)のため暖水が波及しやすいが、10月下旬に比べ流軸はやや沖に移動した。また、11月上旬には暖水渦Eも沖に移動したことから、11月下旬には常磐北部~仙台湾付近にも徐々に親潮系水が南下すると思われる。
(海洋事業部)