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2022年09月27日
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8月におけるサンマの漁況経過

1. 2022年8月の漁況の経過

今年8月のサンマ棒受網における生鮮サンマ水揚量は421.5トンと1971年以降で過去2番目に少なく、前年(821.1トン)の51%であった(表1)。なお、8月の水揚量が最低であったのは前々年(173.6トン)であった。生鮮サンマの平均価格は323円/kgで前年の66%であった(表1)。

例年8月1日に10トン未満船が解禁となるが、今年はロシア主張200海里内での操業を行えない状況であることもあり、サンマ狙いの出漁は無かった。

8月11日に10トン以上20トン未満船が解禁となり、1隻が出漁した。花咲港東南東沖の公海で操業し、18日花咲港に36ケースを水揚した。

8月15日に20トン以上100トン未満船が解禁となり、公海に向けて10隻程度出漁した。18~19日夜に花咲港東南東沖の公海で操業し、23日に花咲港と厚岸港に合計9隻、合計1,123ケースを水揚した。

100トン以上の大型船は、8月20日に出漁した。花咲港東南東沖の公海、小型船が操業した漁場へ向かい、23日から操業を開始し、一部の船は26日に花咲港に合計8隻、64トンを水揚し、大型船の初水揚となった。

今年8月の主漁場は、花咲港東南東沖500~510海里、620~680海里、730~850海里の3カ所で、漁場水温は19~22℃と高かった。(図1)。このように漁場は遠く、小型船の多くは出漁できなかった。

前年8月の主漁場は、花咲港東南沖東420~500海里、560~580海里、600~720海里で、漁場水温は16~19℃と高かった(図2)。このように、今年の漁場は前年よりも遠く、漁場水温はさらに高かった。

2. 2022年8月の漁獲物

今年の大型船の初水揚となった花咲港東南東沖810海里の漁獲物は、体長25~28cm、体重60~80g台が主体であった(図3)。前年同期の漁獲物は体長28~30cm、体重100~120g台が主体であった(図4)。前年と比べると、今年は体長が短く、体重が軽かった。体長と体重の関係を比較すると、全般的に同じ体長でも体重が軽く(図5)、特に体長28~30cm台に注目すると、今年は前年よりも体重が20~30g程度軽く痩せていた(図5)。

3. 現状分析と今後の見通し

国立研究開発法人水産研究・教育機構が今年6~7月に東経150度~西経165度の公海域で行ったトロール調査で採取されたサンマの個体数は、前年を上回ったものの、引き続き極めて低い水準であった。また1歳魚の体長が短かった。今年8月の水揚量は、この調査結果を反映し、極めて低い水準となった。

今年の漁場は前年に比べてやや東側で、漁場水温も高かった。外国船も日本船とほぼ同じ漁場で操業しており、各国漁船とも、この場所でしか漁場となるようなサンマの群を発見できなかった模様である。今年の8月は表層水温が高く、8月後半は前年よりも高かった。この影響で、前年同様、上記トロール調査時に水温が低い場所に分布したサンマは、解禁時点では、より北のロシアEEZに移動したため今年は漁期当初から水温が高い公海に分布するサンマを狙うしかなかったものと思われる。この時期、一般に水温が高い場所にいるサンマは痩せている。今年は前年よりもさらに漁場水温が高いことも影響し、前年よりも痩せたサンマを漁獲したと考えられる。加えて今年は1歳魚の体長が短く、水揚物に体長30cm以上の個体が少ないことから、体重100gを越える個体の水揚量が非常に少なかった。その結果、今年は前年よりも水揚量が少ないものの、生鮮サンマの平均価格が前年よりも安くなっている。

現在漁場に分布しているサンマは南下を開始している魚群ではない。そのため漁場での分布量が少なく群れも極めて薄い。前年は、9月下旬になって太った南下を開始したと考えられる魚群が出現した。今年も、今後しばらくは魚群がまとまらず、かなり不安定な漁場形成となるであろうが、いずれ南下群が出現すると、8月より漁獲がまとまりやすくなると思われる。

(水産情報部)

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