8月の近海カツオ竿釣り船の主漁場は常磐~東北沖の146~154°Eで、前年より南寄りだった(図1)。月平均漁場水温は26.1℃で、前年(22.6℃)より高く、例年より高めとなった。魚体は例年の中型が少なく、より高水温に分布する大~特大が主体であったため、例年より高水温の海域で漁場形成があったとみられる。本年と同様に特大が主体となった2020年同月の漁場水温も高かったことから、本年の漁況は2020年と似た状況だ。
上旬~中旬は黒潮続流が東北沖を北上しており、その流軸上付近で操業した(図2a,b)。下旬になると黒潮続流は常磐沖で東向きの流路となり、宮城沖148°E周辺の暖水塊の漁場と、更に沖の153°E付近が漁場となり、特大主体の漁場も増加した(図2c)。漁場が陸から遠いため、水揚回数が前年より少なく、カツオは2~3日物が主体の水揚げとなった。1日1隻当たり漁獲量(CPUE)の週平均は2.0~7.1トン/隻・日で、月平均は5.6トンと低迷し、豊漁だった前年同期を大幅に下回った(図3)。
8月の全国の釣りによる生鮮カツオ水揚量は2,304トンで、2016年以降で最低だった。例年夏以降に漁場となる常磐から東北沖の不漁が影響したとみられる(図4)。1月からの累計は20,039トンで、前年(31,320トン)を下回ったが、5,6月に例年並みの水揚げがあったことで、不漁だった2020年よりは水揚げが多かった。
釣りによる7月の生鮮カツオの全国平均価格は543円/kgで、前月より更に高値となり、前年同月・過去5年平均より大幅に高かった(図5a)。
まき網によるカツオの7月の水揚量は372トンで前月よりやや増加したが、過去5年平均比15.0%にとどまった。まき網の価格は前月から上昇し498円/kgで、釣り同様に前月より高値となって、前年・過去5年平均を大幅に上回った。夏場に生鮮カツオの価格が上昇したことは近年では極めて珍しく、水揚量が少なかったことが影響したとみられる。釣り、まき網の主な水揚港は気仙沼だった。
前月同様、東北沖では大主体の漁獲となり、中・小のまとまった群れはほとんどみられず、今後も引き続き大型魚主体になるとみられる。大型魚は中型魚と比較するとより暖水を好む性質があるため、20℃以下の海域での漁場形成の見込みは薄く、漁場は三陸北部沖までは北上しないだろう。
また、現在の漁場より港に近くなる東北沿岸での漁場形成が期待されるが、8月は常磐沖で中型主体の漁獲があったものの少量だった。今後、沿岸域での漁場形成も期待しつつ、10月までは沖の漁場も含めて近海で操業が続くとみられるので、本年の生鮮カツオを楽しみたい。
(水産情報部)