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2022年09月09日
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令和4年7月のスルメイカ漁況について

1.7月のスルメイカ漁について

1)全国の生鮮スルメイカの水揚げ動向

JAFIC主要港における生鮮スルメイカの2022年7月の水揚量は2,671トンで、6月を5割上回り、2021年7月の2倍、2020年7月の1割増であった(図1、表1)。

2022年1~7月の累計水揚量は6,500トンで、過去最低であった2021年同期の5,300トンを上回ったものの、2018年~2020年同期を下回った(図2、表1)。

2)生鮮スルメイカの月別平均価格の推移

2022年7月の生鮮スルメイカの平均価格は584円/kgと前月並みで、水揚量が前年同月から倍増したことから、前年の4割安となったが、2018~2020年と比べ、1~2割高となった(図3)。

3)各地の漁場形成の特徴

①日本海小型いか釣り

小型いか釣り船によるスルメイカ漁の7月の漁場形成の状況は以下のとおりである。壱岐諸島・対馬沖周辺(図4のA)ではケンサキイカ主体の漁で、スルメイカの後続群が少なく、山陰以西の漁獲量は大幅に減少した。能登半島沖では、6月後半に、スルメイカ釣り漁場内にクロマグロや小型鯨類が多く出現し、釣糸の絡まりや漁具の破損がみられ、休漁した船が多かった。7月後半になるとクロマグロや小型鯨類の出現も減り、漁具被害もほぼ解消し、金沢港の水揚量も例年並みに回復した。新潟沖と酒田沖では、例年より漁模様が一時的には良かったものの、7月下旬には早くもピークを過ぎ減少した。

②日本海中型いか釣り

中型いか釣り船(船凍船)の能登半島沖の主漁場では、6月下旬は小型いか釣り船と同様の理由で休漁した船が多くみられたが、7月上旬には小樽沖で1日当たり2,500箱(20トン)獲った船があったことから、漁船が一斉に能登沖から小樽沖に移動したものの、2~3日後には1日1隻当たり漁獲量が100箱以下に急減した。このため、能登半島の輪島沖、佐渡沖、酒田沖等の北陸~日本海東北の各海域を探索したが、漁況は低調であった。8月に入ると大和堆西部で1日1隻当たり0.8トン前後の漁が続き、アカイカ漁を終えた船も二次航海はアカイカ漁に出ずに、日本海のスルメイカ漁に切り替えたことから、操業隻数が6月当初の12隻から50隻前後に増加した。前年は夏場の高水温の影響で大和堆北部のロシア水域内に北上したスルメイカ群が多く、7~9月に1日1隻当たり3~5トンの好漁が続いた。しかし、今期はウクライナ情勢の影響もあり、ロシア水域内には入漁せずに、日韓暫定水域内北側の大和堆西部(隠岐諸島北方)で操業した。ロシア水域を探索できないこともあり、1日当たりの漁獲量は前年の1/4~1/6に留まった。

③太平洋小型いか釣り等

太平洋側でも7月になると下北半島沿岸で、小型いか釣りによる昼いか漁が始まった。7月の青森太平洋側のスルメイカの水揚量は536トンで、前年の182トンの約3倍と好調であった。八戸港や石巻港では沖合底曳網が7~8月は休漁期間に入ったが、石巻では小型底曳き網の7月の1日当たり水揚量が数~10トン、7月は合計83トンと前年同月の3トンの約27倍であった。しかし、8月に入ると1日当たり数百kg以下に減少した。

8月中旬になると道東の根室・花咲や厚岸の沿岸で小型いか釣りによる昼いか漁が始まった。根室・花咲港の水揚量は前年8月には280トンあったが、今年は8月29日までの累計で13トンと少なく、根室以西の釧路・広尾・浦河では漁獲はまだない模様である。このことから、今年は、三陸沖から根室半島沖にかけて北上する群はかなり少ないと思われる。

八戸沖の大中型旋網ではスルメイカ・サバ混じりの漁獲が8月中旬からみられ、8月29日現在のスルメイカの累計水揚量は94トンで、前年の年計86トンを若干上回った。しかし、2020年の年計の1,370トンと比べると、引き続き少ない。

2.まとめと今後の動向等について

小型いか釣り船による6~8月下旬の漁場は、日本海では能登半島北部の輪島沖及び西部の西海~富来沖に形成され、石川県内各地の水揚物は金沢市場に陸送された。操業隻数・水揚箱数とも8月に入ると6~7月のピーク時の1/3に早くも減少した。7月の太平洋側は下北半島周辺(泊~白糠~三沢~八戸~久慈)の昼いか釣り漁が1日合計1万箱(50トン)とまとまったが、道東の根室・花咲では1日10数隻が水揚げしたものの、1日合計で数百箱(0.5~1.5トン)に留まった。6~7月の日本海の水揚量はピークを既に過ぎており、三陸では下北半島周辺で、多少良い漁がみられる程度で、道東沖の漁も今のところ期待薄と思われる。

8月の中型いか釣り船の冷凍スルメイカの水揚量は381トンで、前年同月の1割減、前々年同月から半減した。8月の平均単価は1,134円/kgで、7月の723円/kgの57%高、前年8月の664円kgの71%高であった。太平洋公海域で操業するアカイカ(ムラサキイカ)の夏季漁は、好漁で2航海行われた2019年と2020年には7千トン台の水揚げがあったが、2021年は2018年以前並みの3.6千トンに半減した。今期はさらに不漁で前年の4割減の2.2千トンにとどまり8月上旬の水揚げで終漁した。一方、今期の平均価格は985円/kgで、前年同期の466円/kgの2倍の高価格を付けた。年々、中国産を始めとする輸入イカ類が増える一方、国産イカの水揚量が少なくなっており、流通加工業者にとって、国産原料は輸入品と差別化できることも価格高騰の要因と考えられる。

燃油が高騰する中で、価格が前年の倍近くに高騰しても、水揚量が伸びなかったため、これまでのところ水揚金額の減少分を充分にカバーできていない。このままでは、生産者・加工業者・流通業者にとって厳しい局面が続くと思われる。

(水産情報部)

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