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2022年08月30日
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7月の近海カツオ竿釣り漁場と生鮮カツオの水揚状況について

1.近海竿釣り船の漁場

近海カツオ竿釣り船の漁場は6月末から7月上旬にかけて房総南東沖から常磐沖に形成され、7月中旬には東北沖の146~154°Eが主漁場となった(図1, 2)。東北沖の漁場が遠いため、2~3日物が主体の水揚げとなり、新口は少なかった。7月は延447隻の操業で、前月より減少し、前年同期(648隻)より少ないが、漁場が遠かったためとみられる。

7 月上旬は房総沖~常磐沖の黒潮続流より南側の海域から東北沖まで漁場が分散し、カツオ大(漁船における銘柄)主体の漁場が多かったが、カツオ中・小(漁船における銘柄)主体の漁場も見られた(図2a)。中旬は東北沖の黒潮が大きく蛇行する海域が主漁場となり、ほぼカツオ大主体となった(図2b)。その後、下旬に漁場は南東に移動し、カツオ大主体が続いていた(図2c)。漁場水温は平均24.9℃で前月より上昇し、前年より高かった。週別の1日1隻当たり漁獲量の平均は4.5~5.8トン/隻・日と低迷した(図3)。

2.水揚量と価格

7月の全国の釣りによる生鮮カツオ水揚量は3,871トンで、不漁だった2020年をやや上回ったものの豊漁だった前年同月比37%にとどまった(図4)。1月からの累計は17,830トンで、前年(25,497トン)を下回った。本年の各港の累計水揚量は7月末時点で勝浦が6,126トン(前年比90%)、鹿児島が5,456トン(前年比125%)、気仙沼4,325トン(前年比41%)だった(図5)。漁場が前年よりやや南だったため、気仙沼への水揚量が前年を下回ったとみられる。鹿児島は5月まで水揚量が多かったため、累計では前年を上回った。

釣りによる7月の生鮮カツオの全国平均価格は467円/kgで、前年同月・過去5年平均より大幅に高かった(図6a)。

まき網によるカツオの7月の水揚量は314トンで前月から半減し、豊漁だった前年同月比7.2%、過去5年平均比8.8%だった。まき網の価格は前月から上昇し496円/kgで、釣り同様に前年・過去5年平均を大幅に上回った。まき網の主な水揚港は気仙沼だった。

3.今後の見通し

気仙沼港に水揚げされた竿釣りによるカツオの尾叉長組成を図7に示す。この図では、既往 の知見に基づき、おおよそ発生季節別に、魚体が大きい順にX、A~D群に分類して色分けしている。本年は、5月から魚体が大きく、今後成熟すると思われる群れ(X群)が主体で、7月になって未成熟の中型の群れ(B群、C群)が出現しはじめた。例年,秋に東北沖で漁獲の主体となる脂の乗った群れはこのB、C群だが、今年は春先から量的にも組成的にもかなり少ない状況が続いているため,伊豆諸島以北へのB、C群の来遊量が少ないと考えられる。今後はB群、C群のような中型の群れも少量漁獲されるとみられるが、主体は引き続き大型魚となる見込みだ。

大型魚は中型魚と比較するとより暖水を好む性質があるため、20℃以下の海域での漁場形成の見込みは薄い。現在東北沖の海況は黒潮系の暖水が水深100mまで分布している海域もあり、暖水を好むカツオの北上には好条件とみられるが、大型魚の漁場は引き続き海面水温25℃前後となり、漁場の北上は限定的となる見込みだ。

東北沿岸での漁場形成は今のところみられないが、今後水温上昇とともに沿岸域でも漁場が形成され、操業回数と水揚量増加を期待したい。

(水産情報部)

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