親潮は縮小して北海道東沖まで後退したが、三陸海域は引き続き近年より低温の海域が沿岸に残り、沿岸は低め、沖合は高めであった。
・5月上旬に九州南東沖で黒潮流軸と結合した冷水渦Bは東進し、黒潮内側域の冷水と一体化したため、四国沖では黒潮の離岸が進んだ。
・冷水渦Aはやや東進した。また、黒潮蛇行の南端は30°N付近に安定して位置し、大蛇行は継続した。蛇行北上部の潮岬への接岸は解消した。黒潮流軸は、遠州灘~石廊崎では接岸が進み、伊豆諸島付近では前月よりやや北よりの三宅島付近を通過した。
・黒潮流軸周辺の海面水温は、九州南沖まで27℃の等温線が北上し、九州東沖~潮岬沖は25~26℃に昇温したが、伊豆諸島海域は梅雨前線の停滞等の影響により22~24℃で停滞した。
・四国~熊野灘沖の海面水温は、冷水渦Aの影響で近年より1~2℃低めで、九州東沖も冷水の影響で1℃弱低めであった。遠州灘~石廊崎沖(図1-①)の海面水温は、黒潮流軸の接岸により近年より1℃前後高めであった。
・小笠原~南鳥島付近(図1-②)の海面水温は、日射が強く、風も弱く、気温が高かった影響で、近年より1℃前後高めの海域が下旬にかけて拡大した。
・伊豆諸島南沖や関東東沖(図1-③)の海面水温は、梅雨前線が停滞した影響で近年より1℃前後低めであった。
・黒潮続流は、犬吠埼以北では5月に引き続き離岸し、常磐北部沖の37°N・145°E付近まで北上し、145°E以東で著しく蛇行した後、40°N付近まで北上した。
・房総半島沖では、冷水渦Cはやや西進して黒潮続流の流軸に接近した。
・鹿島灘沿岸(図1-④)では、黒潮続流から暖水が波及し、海面水温は近年より2℃前後高めであった。
・親潮の面積(100m水温5℃以下)は4月以降縮小続け、平年(1993~2017年)より大幅に小さくなった。親潮は、沿岸では中~下旬には後退して不明瞭になり、沖合では40~41°N・148°E付近を南下した。
・親潮は後退したが、三陸沿岸(図1-⑤)の海面水温が近年より1~2℃低い海域は残り、黒潮続流北縁に沿って東進するように分布した。
・道東沖の暖水渦Fは縮小して不明瞭になった。
・三陸沖~道東沖(図1-⑥)や道東沿岸(1-⑪)の海面水温は、黒潮続流の峰からの暖水波及の影響で、近年より高めの状態が続き、特に沖側(147°E付近)の峰周辺や道東沿岸2~3℃高めであった(図2)。この暖水波及は、表面から水深100m以深に達していた。
・三陸沿岸(図1-⑤)の海面水温は、暖水渦が停滞していた前年と比べて2~4℃低く(図3)、黒潮続流の沿岸より(145°E付近)の峰の北側も広範囲で2~3℃低めであった。
・一方、三陸北部沖~道東海域(図1-⑥)の海面水温は、冷水が分布していた前年と比べて2~4℃高めの海域が広がった(図3)。
・沖縄の西沖(⑧)の海面水温は、日射が弱かった等、気象の影響で近年より低めであった。一方、九州西沖の海面水温は、下旬にかけて日射が多く、近年より高めの海域が拡大した。
・対馬暖流の勢力は徐々に弱まり、上旬は平年(1993~2017年)並であったが、下旬の平年より弱めであった。しかし、対馬暖流の海面水温は、高めの気温や日射等の影響で、北部を中心に高めであった。特に沿海州沖(⑨)は近年より2℃前後高めの海域が広がった(図2)。
・東朝鮮暖流域の暖水渦は不明瞭になり消滅した。
・対馬暖流は山陰では著しく離岸し、北陸でも離岸した。若狭湾~東北沿岸の対馬暖流の内側の海面水温は近年より若干低めであった
(海洋事業部)