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2022年06月23日
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vol.1095 記事一覧

令和4年5月の海況について

黒潮流路は、冷水渦の結合で九州東沖に小蛇行を生じ、潮岬沖の大蛇行と合わせてW字型になった。親潮は襟裳岬付近まで後退したが、三陸沿岸海域は引き続き近年より低めであった。

黒潮域

・2月上旬に大蛇行最南下部より切り離された冷水渦は約3カ月かけて西進し、5月上旬に九州南東沖で黒潮流軸と再結合した。この冷水渦Bは徐々に北東進し、九州東岸では黒潮流軸が離岸した。

・冷水渦Aは停滞し、蛇行の南下部も30°N付近にあり、大蛇行は安定して継続したが、蛇行北上部は西偏して中旬には潮岬に接岸し、紀伊水道にも暖水が著しく波及した。

・黒潮は、伊豆諸島海域では三宅島~八丈島を通過した。

・2017年秋季に始まった今回の大蛇行は、4年9カ月におよび1975年に始まった大蛇行の継続期間を超え、観測開始以来最長となった。

・黒潮流軸周辺の海面水温は、九州南沖は25℃に達し、九州東沖~潮岬沖は23~24℃、伊豆諸島海域は22~23℃に昇温した。

・九州~四国沖の海面水温は、4月に引き続き冷水渦Aの影響で近年より1~2℃低めで、九州東沖も冷水渦Bの影響で1℃前後低めであった。潮岬~熊野灘~遠州灘(図1-①)は、黒潮流軸の屈曲部からの暖水波及により近年より1~2℃高めであった。

・小笠原~南鳥島付近(図1-②)の海面水温は、風が弱く気温が高かった影響で近年より1℃前後高めの海域が拡大した。しかし、黒潮流軸周辺の伊豆諸島南沖や関東東沖(図1-③)ではやや低めの状態が継続した。

親潮域・混合水域

・黒潮続流は犬吠埼以北では4月に引き続き離岸し、常磐北部沖の37°N・145°E付近まで北上した。

・房総半島沖では、新たな冷水渦Cが現れ、西進して黒潮続流流軸に接近しつつある。

・常磐北部沿岸(図1-④)の海面水温は、黒潮続流から暖水が波及したため近年より2~4℃高めであった。

・親潮の面積は、4月下旬には平年(1993~2017年)並みに回復したが、5月には平年より小さくなり、親潮第1分枝の南限は襟裳岬沖の41°N・144°Eまで後退した。

・親潮の後退に伴い、三陸沿岸周辺(図1-⑤)の海面水温が近年より低めの海域は縮小傾向だが、依然として近年より1~2℃低めの海域が広がっていた。

・黒潮続流の第一の峰の北側は暖水が北上し、三陸沖(図1-⑥)は近年より海面水温が2~4℃高めの状態であった。

・暖水渦Fの影響に加え、暖水渦Eが黒潮続流流軸と結合して一体化して暖水が波及した影響で、三陸はるか沖合(図1-⑦)は海面水温が近年より広範囲で2~4℃高い状態であった。

東シナ海

・南部を中心に、平年より日射が少なく風が強かった影響で、近年より高めの海域は縮小した。

日本海

・対馬暖流の勢力は平年(1993~2017年)より弱め~平年並であったが、気象の影響が大きく、海面水温はほぼ全域で近年より高めであった。特に朝鮮半島北部沖(図1-⑨)や沿海州沖(図1-⑩)で2℃以上高めであった。

・東朝鮮暖流域の暖水渦Gは、周囲も昇温したため不明瞭になったが、5月も朝鮮半島中部に停滞した。

・対馬暖流は、山陰~北陸では蛇行しながら離岸し、若狭湾北沖では蛇行南下部から冷水が波及し(図1-⑪)、海面水温は近年よりやや低めであった。

黒潮域と混合域における前年との違い

・2022年、2021年共に黒潮は大蛇行状態であるが、その流路は大幅に異なっていた。

・2022年の黒潮流路は、蛇行北上部が2021年に比べて西偏し、熊野灘に接岸した(図1-1)。その影響で、熊野灘海域(図2-②)の月平均海面水温は21~22℃と2021年に比べて1~2℃高めであった。一方、伊豆諸島南沖海域(図2-①)の海面水温は20~22℃で、2021年に比べ1~2℃低い海域が広範囲に広がった。

・2022年の混合域では、北上暖水が三陸のはるか沖合の150°E(図1-⑦)を中心に広がり、145°E付近の黒潮続流の第1の峰からの北上は局所的であった(図1-⑥)。2021年の三陸沖の145°E付近には大規模な暖水渦Aが接岸気味に分布していた。このため、2022年の三陸の沿岸付近の海面水温は(図2-③)2021年に比べ広範囲で2~5℃低めであった。一方、三陸のはるか沖合は、暖水北上のため2021年に比べ海面水温が2~6℃高めの海域(図2-④)が広がった。

・このように、2022年の5月は、混合域の海面水温は沿岸寄りでは2021年に比べて大幅に低め、沖合は大幅に高めであった。この傾向は当面続くと考えられる。

・今年も6月以降にカツオが混合域に北上し、竿釣り・まき網共に主漁場になると思われるが、上記のように水温分布が前年とは大幅に異なっているため、今後の海況の変化に注目していきたい。

(海洋事業部)

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