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vol.1066

令和4年2月の海況について

 黒潮流路は大きく変動し、四国沖は著しく離岸した。北日本では親潮系冷水の南下が進み、三陸沖は強い低めになった。一方、道東沖は引き続き高めであった。

黒潮域

・2月上旬に黒潮大蛇行南端から冷水渦Bが切り離されると共に、九州東沖の冷水渦が東進して蛇行部(潮岬沖)の冷水渦と一体化して冷水渦Aになり、黒潮流路は大きく変化した。しかし、最南下緯度は136 °E以東で31°Nに達しており、大蛇行の定義(本州南方の136〜140°Eで32°N以南まで達する)に合致する。そのため、引き続き大蛇行状態といえる。
・黒潮は四国沖〜潮岬沖で著しく離岸し、熊野灘南沖で緩やかに蛇行して伊豆諸島西沖を北上した。熊野灘への接岸は解消したが、御前崎付近では引き続き接岸し、伊豆諸島北部を東進した。
・黒潮流軸周辺の海面水温は1℃前後降温し、九州〜四国沖は20〜21℃、潮岬沖〜伊豆諸島は19〜20℃、房総半島沖は18〜19℃であった。
・九州〜四国〜潮岬沖の海面水温は、冷水渦Aの影響で近年より1〜2℃低めであった。一方、遠州灘〜相模湾付近(図1-@)は黒潮流軸接岸の影響で1〜2℃高めであった。
・本州南方沖や沖縄東沖(図1-A)は、寒気や季節風が強かったため、1月に引き続き近年より若干低めであった。

親潮域・混合水域

・黒潮続流は犬吠埼以北では離岸し、北上部は37°N・145°E付近まで南下した。鹿島灘周辺には黒潮続流から暖水が波及して近年より海面水温が1〜2℃高めであったが、常磐北部〜三陸南部沿岸に波及していた暖水は消滅した。
・三陸〜常磐北部(図1-C)は、海面水温10℃以下の親潮系冷水の南下が進み、広範囲で近年より4〜5℃低めであった。
・1月まで釧路南東沖に停滞していた暖水塊は、黒潮続流北上部から暖水した波及と一体化し(図1-D)消滅したが、この暖水波及の影響で道東沖の海面水温は広範囲で近年より5〜6℃高い状態が続いた。
・三陸〜常磐北部で親潮系冷水の南下が進み、親潮面積は拡大傾向であるものの平年(1993〜2017年)より小さかった。
・親潮第1分枝は37°N・141〜142°N付近まで南下が進んだ。一方、第2分枝は150〜151°Eに弱い南下部がみられるが不明瞭であった。
・黒潮続流の蛇行部からは冷水渦C・Dが2月上旬に切り離された。また、沖合の北上部からの暖水波及により、暖水渦Eが出来つつある。

東シナ海

・北部の海面水温は、寒気の影響で近年より低めであったが、九州西沖は黒潮系暖水が波及して若干高めであった。

日本海

・2月下旬は寒気や季節風が強くなり、ピョートル大帝湾〜日本海中央部(図1-I)には近年より海面水温が1℃弱低めの海域が広がった。
・対馬暖流の勢力は、1月に引き続いて平年(1993〜2017年)よりかなり強め〜強めの状態が継続した。
・東朝鮮暖流の勢力も強く、朝鮮半島南部沖(図1-F)や北部沖(図1-H)の海面水温は、1月に引き続き2〜4℃高めの状態が続いた。また、北部沖の暖水塊Gも停滞した。
・山陰東部〜北日本沿岸(図1-G)の海面水温は、対馬暖流の山陰〜北陸での離岸や、寒気や季節風の影響で近年より1℃前後低めであった。
・北海道西沖(図1-J)の海面水温は、対馬暖流系水の影響で近年より1℃前後高めであった。

黒潮及び続流部からの複数の冷水渦の切り離し

・1月下旬の黒潮流軸は、図2上のように潮岬沖で30°N以南まで発達し(図2上-B)、続流部にも大蛇行に匹敵するような大規模な蛇行(図2上-C)が発生した。これらの蛇行は2月上旬にほぼ同時に大きく変化した。
・2月上旬後半にはJAFIC EYE第244号で解説したように、黒潮大蛇行南端部(図2上-B)から冷水渦B(図2下)が切り離された。
・この大蛇行南端部からの冷水渦の切離にやや先行し、2月上旬前半に続流部の蛇行(図2上-C)から冷水渦C(図2下)が切り離された。
・黒潮大蛇行南端部からの冷水渦の切り離しは、2020年に数回起こっており、2020年10月上旬の切り離しの時は冷水渦が西進し、約4か月後に屋久島沖で黒潮流軸と結合した。続流部での冷水渦の切り離しも、直近では2021年5月下旬と2021年9月下旬に見られ、いずれの場合も切り離し後西進し、約3か月後に房総半島沖で黒潮続流の流軸と結合した。
・しかし、2月上旬のように大蛇行南端部と続流部の蛇行の2か所でほぼ同時に冷水渦の切り離しが起こったのは、2017年秋に始まり4年以上継続する今回の黒潮大蛇行では初めてである。
・冷水渦Bは暖水塊に阻まれているが緩やかに西進しており、これから本格化するカツオ竿釣の漁場にも近いため影響を及ぼす可能性がある。また、冷水渦Cは黒潮続流の流軸にかなり接近しており、流軸と再結合する可能性が高いと思われる。再結合した場合は、黒潮続流北上部からの暖水波及に影響し、三陸沖の海況にも影響が及ぶ可能性がある。このため、これらの冷水渦の動きを今後も注目していきたい。

   (海洋事業部)
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