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vol.1060

2021年10〜12月の主要魚種の水揚量・市況動向

1.主要港における主要魚種の動向

 JAFICが調査している全国主要108港における2021年10〜12月の調査対象全魚種の累計水揚量は48万4千トンで、前年同期(54万6千トン)の89%であった(表1)。1〜12月の累計水揚量は194万5千トンで、前年同期(199万3千トン)の98%であった。10〜12月の平均価格は244円/kgで、前年同期(226円/kg)の108%であった。月別にみると、10〜12月を通じて前年同月を上回る価格で推移した。1〜12月の平均価格は197円/kgで、前年同期(190円/kg)の104%であった。  水揚げがなかったギンザケ(養殖)を除く主要47魚種の10〜12月の魚種別の累計水揚量と平均価格を新型コロナウイルス流行前の2019年同期と比較した(表2、図1)。なお、水揚量・価格ともに「前年同期並み」とあるのは増減率 0〜5%の場合を示す。
 水揚量は、スケトウダラや冷スルメイカなど16魚種が2019年同期を上回り、キンメダイなど4魚種が2019年同期並み、マイワシやサンマなど27魚種が2019年同期を下回った。
 平均価格は、さば類や生メバチなど24魚種が2019年同期を上回り、ビンナガなど7魚種が2019年同期並み、スケトウダラやマアジなど16魚種が2019年同期を下回った。このうち水揚量が2019年同期を下回ったにもかかわらず、価格を下げた魚種は、カタクチイワシなど5魚種で、うち1,000円/kg以上の高価格魚はなかった。  同様に2020年10〜12月と2019年10〜12月を比較した(図2)。平均価格は、さば類やサンマなど13魚種が2019年同期を上回り、冷メバチなど9魚種が2019年同期並み、ウルメイワシやメカジキなど25魚種が2019年同期を下回った。このうち水揚量が2019年同期を下回ったにもかかわらず、価格を下げた魚種は、生キハダなど6魚種で、うち1,000円/kg以上の高価格魚はヒラメ(養殖)とうに類(剥き身)であった。  さらに、2021年10〜12月と2020年10〜12月を比較した(図3)。平均価格は、ニシンや生メバチなど34魚種が2020年同期を上回り、マイワシなど7魚種が2020年同期並み、マダラやトラフグなど6魚種が2020年同期を下回った。このうち水揚量が2020年同期を下回ったにもかかわらず、価格を下げた魚種はホッケのみであった。  2019年10〜12月を基準とした比較では、2021年10〜12月の方が、2020年10〜12月に比べて価格を下げた魚種数は少なく、水揚量が減少したにもかかわらず価格が下落した魚種数も少なかった。また、2021年10〜12月と2020年10〜12月を比較すると、価格が上昇した魚種数が多かった。2021年10〜12月は2020年同期と比較すると、2019年との価格差が縮小し、コロナ禍の影響が緩和されつつあることが示唆される。

2. 産地市場における代表魚種の動向

 産地市場において取扱数量の多い魚種および高価格魚の代表として2魚種について動向を検討した。

1)マイワシ
 水揚量は10〜12月を通じて前年同月を下回り、累計水揚量は10万8千トンで前年同期の89%であった。価格は10月が40円/kg(前年比103%)、11月が52円/kg(前年比102%)、12月が54円/kg(前年比108%)であった(図4)。また、貿易統計(財務省)によると、冷凍マイワシの10〜12月の輸出量は1万2千トンで前年同期の128%、金額は12億4千万円で前年同期の132%で、数量・金額ともに前年同期を上回り好調であった。 2)生クロマグロ
 水揚量は、10月は前年同月の126%、11月は127%、12月は224%と大きく上回り、累計水揚量は456トンで前年同期の146%と好調であった。価格は、10月が2,095円/kg(前年比107%)、11月が3,076円/kg(前年比130%)、12月は3,615円/kg(前年比106%)で、10〜12月を通じて前年を上回った(図5)。

3.東京都中央卸売市場における動向

 東京都中央卸売市場の水産物の取扱数量と平均価格を図6に示した。数量は、10月が2万トン(前年比104%)、11月が1万9千トン(前年比102%)、12月が2万1千トン(前年比98%)で、10〜12月の累計数量は前年の101%であった。価格は、10月が1,257円/kg(前年比107%)、11月が1,402円/kg(前年比116%)、12月が1,693円/kg(前年比119%)で、10〜12月を通じて前年および過去5年平均を上回った。
 次に、一般鮮魚・冷凍魚・養殖魚の代表として3魚種について、東京都中央卸売市場における動向を検討した。

1)マアジ
 数量は、10月が990トン(前年比104%)、11月が840トン(前年比81%)、12月が1千トン(前年比113%)であった。価格は、10月が547円/kg(前年比91%)、11月が625円/kg(前年比126%)、12月が504円/kg(前年比96%)で、数量の増減に伴い推移した(図7)。 2)冷メバチ
 数量は、10月が980トン(前年比78%)、11月が1千トン(前年比84%)、12月が1千200トン(前年比88%)と、10〜12月を通じて前年を下回った。価格は、10月が1,294円/kg(前年比141%)、11月が1,343円/kg(前年比133%)、12月が1,330円/kg(前年比132%)と、前年を上回った(図8)。価格は7月以降、過去5年平均を上回っており、この原因として、コロナ禍で外国人船員の確保が難しいことや貿易の活発化に伴う世界的なコンテナ不足などから国内搬入が減少したことが考えられる。 3)養殖マダイ
 数量は、10月が960トン(前年比138%)、11月が970トン(前年比87%)、12月が1千200トン(前年比85%)であった。価格は、10月が908円/kg(前年比148%)、11月が981円/kg(前年比138%)、12月が1,063円/kg(前年比152%)であった(図9)。2020年は、新型コロナウイルス流行による業務向けの需要減少の影響で、年間を通して前年を大きく下回る価格で推移したものの、2021年は価格の上昇が続き、12月には過去5年平均並みまで回復した。

4.まとめ

 産地市場では、2021年10〜12月と2019年との価格差は2020年同期よりも縮小した。また、東京都中央卸売市場における平均価格は、10〜12月を通じて前年および過去5年平均を上回って推移した。10月には、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が全面的に解除され、産地市場・消費地市場ともに価格は回復基調で推移したことから、コロナ禍の影響が緩和されつつあり、新型コロナウイルス感染拡大による魚介類の需要減少の影響は前年ほど大きくなかったことが示唆される。
 本年1月以降、新型コロナの感染が再び急拡大しており、観光・外食需要への影響が懸念されることから、引き続き市況の動向に注意していく必要があるだろう。

   (水産情報部)
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