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vol.1059

令和4年1月のスルメイカ漁況について

1.1月のスルメイカ漁について

1)全国の水揚げ動向
 JAFIC主要港における生鮮スルメイカの2022年1月の水揚量は218トンで、JAFICがデータ収集を開始した2000年以降の1月の水揚量としては過去最低であった。3〜4月のスルメイカ漁の端境期を前に極めて低調な漁況で、前月の283トンから25%減少し、前年同月の463トンから半減した(図1、2)。
2)各地の漁場形成の特徴
@日本海
 中型いか釣り船(船凍)は、昨年12月に引き続き日本海の対馬東(図3のA)で、小型いか釣り船と共にスルメイカ漁を行った。来遊資源量が少ないことや、燃油高騰の影響もあり、水揚金額が少なく採算割れしている船が多いことから、2月末までの漁期を2ヶ月以上残し、12月前半で今期の操業を切り上げた船もみられた。また、一部の船は例年どおり三陸近海のアカイカ漁に切り替えたことから、この時期にスルメイカを主目的とする中型いか釣り船(船棟)の操業は、前月に比べて減少した。
 小型いか釣り船によるスルメイカ漁は、対馬東〜壱岐諸島周辺(図3のA)と隠岐諸島周辺(図3のB)や能登半島〜佐渡周辺などで操業した。海面水温の低下に伴い、1月下旬に北陸〜山陰沿岸〜九州北部に産卵南下群の来遊が見られ、小型いか釣り船の漁獲が一時的に上向いたほか、境港・浜田・対馬のまき網漁にも混獲された。また、富山湾の氷見の定置網では1月下旬にスルメイカの入網が始まり、当初は1日数トンであったが、月末には昨年・一昨年同様に10トン/日に急増した。年明けから漁の端境期にあたる4月中旬までスルメイカの漁獲が全国的に少ない中、まとまった漁獲のある富山湾のここ1〜2ヶ月間の動向が注目される。

A三陸沖のアカイカ漁
 三陸近海(岩手沖)では、アカイカ冬季漁が1月下旬に始まり、13〜14隻が操業した。年明けに調査した時点ではアカイカの漁獲が皆無であったが、1月下旬に漁況が上向き、2月中旬は操業隻数が17隻程度に増加したが、2月中旬は7隻に減少した。アカイカ夏季漁は、3.5千〜7.0千トン/年のまとまった水揚げがみられたが、2017年漁期・2018年漁期の冬季漁は500〜600トン/年であった。2019〜2021年の冬季漁は更に不漁となり、数十トン/年と低迷した。

B三陸沖の沖合底曳網漁
 三陸の沖合底曳網(図3のC)によるいか類の漁獲は、昨年11月初頭まではスルメイカ主体(10トン/日)であったが、12月以降はヤリイカ主体に切り替わった。1月中旬にはヤリイカが20トン/日から40トン/日に増加し、好漁が続いた。2月になるとヤリイカの漁獲も一段落し、小型のジンドウイカ類(ヒイカ)の漁獲が数トン/日に上向いた。スルメイカも数百kg/日と少なかったものの、1月末からは5トン/日前後に再度増加した。

2.生鮮スルメイカの月別平均価格の推移

 2022年1月の生鮮スルメイカの月別平均価格は591円/kgで、前月から100円以上低下した(図4)。600円台の高値相場が2020年10月以降1年以上続いたが、後述するように2021年12月以降は冷凍物の価格が高騰し200円以上の開きが出ている。量販店などの小売店での鮮魚向けの販売や加工原料向けでは、国内のスルメイカの代替品として、ロシア・韓国・中国産のスルメイカの解凍物の販売が増えたことに加えて、豊漁のアルゼンチンマツイカや北米産のカナダマツイカの輸入・販売も増えており、国内のスルメイカが不漁であるにもかかわらず、生鮮スルメイカの価格は頭打ちとなっている。

3.冷凍スルメイカの月別水揚げ状況

 主要港における冷凍スルメイカの2022年1月の水揚量は103トンで、前月の1/8、前年同月の1/4であった(図5)。1月前半は、時化休漁が多かったことや操業隻数が少なかったことも、水揚量減少の要因となった。

4.冷凍スルメイカの月別平均価格の推移

 冷凍スルメイカの2021年の月別平均価格は600円/kg台で推移していたが、2021年12月には862円/kgと200円急騰し、2022年1月も826円/kgと前月並みとなった(図6)。

5.今後の動向等について

 国内の生鮮・冷凍を合わせたスルメイカの水揚量は、農水省統計部の漁業養殖業生産統計(以下、生産統計と呼ぶ)によると、2019年に過去最低の39,587トンを記録したが、2020年は48,290トンに回復した。2021年の値は公表前であるが、JAFICのおさかなひろばによる2021年のスルメイカの年間水揚量は22,331トンであった。生産統計に対するおさかなひろばの集計値のカバー率は、スルメイカの場合平均70%である。このことから2021年のスルメイカの総水揚量は約3.2万トンであり、過去最低を更新したと推定される(図7)。
 三陸・常磐や日本海青森側などでは、今冬はヤリイカが豊漁である。青森水技センター発行のウオダス2120号によると新深浦町大戸瀬では、2022年1月に138トンの水揚げがあり、前年比の3倍、過去5年平均の2.5倍であった。石巻では、2022年1月のヤリイカの水揚げは336トンで、前年同月の56%増と好漁であった(スルメイカの1月は21トンで、前年同月の半分)。
 スルメイカの資源量に比べるとヤリイカの資源量は少ないものの、近年増加傾向にあると評価されている。三陸のジンドウイカ類なども含め、多少でも獲れているいか類資源を有効活用していく必要があると思われる。

   (水産情報部)
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