太平洋側の道東沿岸や黒潮以南、日本海沿岸の海面水温は低めであったが、道東・三陸沖や朝鮮半島北部沖では引き続き高めであった。
・1月も大蛇行は継続し、蛇行北上部が熊野灘に接岸した。
・黒潮流路は九州沖の冷水渦(図1-H)が拡大しながら東進した影響で九州東沖で離岸が進み(図1-@)、四国沖で屈曲して逆Ω字状に蛇行して潮岬沖の28 〜29°Nまで南下し、熊野灘〜遠州灘に接岸(図1-A)した。しかし、下旬には熊野灘では離岸し始め不安定になった。
・伊豆諸島付近では緩やかに南に蛇行し、八丈島付近を通過した。
・黒潮流軸の海面水温は12月から1〜2℃降温して、九州東沖〜四国沖は21℃、潮岬沖〜伊豆諸島付近は20〜21℃、房総半島沖は18〜19℃であった。
・沖縄東沖〜本州南沖(図1-B)の海面水温は寒気などの影響で12月に引き続き広範囲で近年よりやや低めであった。
・九州東沖(図1-@)の海面水温は、冷水渦の影響で近年より1℃前後低め、熊野灘〜遠州灘は黒潮流軸が接岸した影響で近年より2〜3℃高めであった。
・黒潮続流は房総半島をやや離岸して直線的に北東進し、金華山沖の37〜38°Nまで北上した。
・房総半島沖で12月下旬に黒潮続流の流軸と結合した冷水渦は、黒潮続流とともに金華山沖(図1-D)まで縮小しながら北東進した。
・常磐海域は、沿岸から沖合まで黒潮続流からの暖水が波及し、海面水温は近年より2〜3℃高めであった(図1-C)。
・暖水渦(図1-C)は、縮小しながら三陸南部沖まで南下し、渦構造は不明瞭になった。
・釧路南東沖の暖水塊(図1-D)は、ほぼ同じ位置で縮小し、黒潮続流北上部から波及する暖水と一体化し(図1-D)、海面水温が近年より5〜6℃高い海域が広がった。
・道東沿岸(図1-F)や三陸沖(図1-E)の海面水温は、寒気など気象の影響や親潮系冷水南下の影響で近年より1〜2℃低めであった。
・親潮面積は拡大傾向にあるものの、1月も平年(1993〜2017年)よりは小さい状態であった。
・親潮第1分枝は南下・接岸傾向を示し、おおむね40°N・143°N付近まで南下が進んだ。一方、第2分枝は40〜41°N・150°E付近まで後退した。
・九州付近の海面水温は、寒気の影響で近年より弱い低めだが、南部はおおむねやや高めであった。
・平年より寒気と風が強く、海面水温は中部(図1-K)を中心に近年より1〜2℃低めの海域が広がった。
・対馬暖流の勢力は、12月に引き続き平年(1993〜2017年)より強めの状態が継続した。
・東朝鮮暖流の北上も強かったため、朝鮮半島北部には暖水渦G(図1-G)がみられ、朝鮮半島北部沖の海面水温(図1-J)は12月に引き続き2〜4℃高めの状態が続いた。
・対馬暖流は、山陰西部で離岸が進み(図1-H)、大和堆付近で蛇行して、若狭湾北沖に南下した。この影響で若狭湾沖(図1-I)では12月同様に冷水が南下し、海面水温は近年より1〜2℃前後低めであった。
・北日本沿岸の海面水温は、寒気や季節風の影響に加え、対馬暖流が離岸したため、近年よりやや低めになった。
・2020年は、6月下旬〜7月上旬に大蛇行南端からの冷水渦の切離が、7月下旬〜8月上旬と8月下旬〜9月上旬には冷水渦の切離と大蛇行との再結合が起こった。
・2020年10月上旬には、九州東沖での冷水渦の発達と東進とともに大蛇行にくびれ(図2c-あ)が生じ、蛇行南端が冷水渦(図2d-A)として切離され、その冷水渦が西進して約4か月後2021年2月上旬に屋久島付近で黒潮流軸と結合して蛇行(図2e-A’)を生じた(図2c〜e)。
・この結合から約3か月間にわたり、大蛇行が大きく変動する状態が続いたが、2021年は大蛇行南端からの冷水渦の切離は起こらなかった。
・2022年は、黒潮流路が1月中旬まではほぼ安定しており、逆Ω字状に蛇行して熊野灘に接岸した。しかし、1月下旬には九州東沖の冷水渦が拡大・東進して四国沖で離岸が進むとともに、熊野灘では流軸の離岸が進んでJ字型の大蛇行(図2a)となった。
・九州東沖の冷水渦は、2月3日にはさらに東進して蛇行南下部も東進し、四国沖の流軸屈曲部のやや南で蛇行がくびれ始めた(図2a-い)。その後2月10日前後に蛇行南端が切離され、冷水渦(図2b-B)が発生した。
・今回の冷水渦の切離は、九州東沖の冷水渦の発達と東進など、2020年10月の冷水渦切離時と海況に類似点がみられる(図2)。このため、切離された冷水渦Bが、今後2020年10月の冷水渦Aと同様の経過をたどる可能性もあるため、引き続き注目していきたい。