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vol.1044

令和3年11月のスルメイカ漁況について

1.11月のスルメイカ漁について

1)全国の水揚げ動向
 JAFIC主要港における生鮮スルメイカの11月末現在の累計水揚量は1.5万トンで、1990年以降で最低であった2018年同期(2.3万トン)の6割にとどまった。
 太平洋側を北上する冬季発生系群の資源量が多かった2013〜2014年までは、年間10万トンの水揚量があり、9〜11月には、三陸・道東で冬季発生系群の大量の漁獲があったことから、単月で2万トンを超える明瞭な水揚量のピークがみられた(図1)。しかし、2015年には7万トン、2016年には3.5万トンと急速に減少した。2017〜2020年は2.5万〜3万トン台に低迷していたが、2021年は年間2万トンを割り込むことが濃厚となった(図2)。
2)各地の漁場形成の特徴
@日本海
 日本海で操業する中型いか釣り船(船凍)は、前月に引き続き、隠岐諸島北(隠岐堆)で操業した(図3 A)。10月中旬までは、中型いか釣り船の主漁場である大和堆〜隠岐堆の表面水温は平年より2〜3℃高かったが、10月下旬〜11月には平年並みとなった。大和堆以北の大陸沿岸〜朝鮮半島沿岸は、引き続き平年より2〜3℃高かった。隠岐諸島北の1隻1日当たり漁獲量は、群が薄く時化も多かったことから、30〜100箱(0.2〜0.8トン)と低調であった。隠岐堆周辺はスルメイカの産卵水域の一つであることから、10月に引き続き産卵後の「皮イカ」が漁獲物の1%を占めた。

A東シナ海
 対馬沖(図3B)では、小型いか釣り船が操業し、10月はスルメイカの南下群のまとまった来遊があり、一時的に好漁となったものの、10月末には低調となった。11月は、ケンサキイカ主体にスルメイカ混じりの漁獲で、時化が多く低調に推移した。

B日本海北部
 日本海最北部の稚内(図3C)では、前年までは7〜11月に小型いか釣り主体に300〜2,300トンの水揚量があった(図4, 5)。しかし、今年は10月末まで沖合底曳網による少量の漁獲があったのみであった。11月にようやく小型いか釣り船の操業が始まり、数隻〜10数隻が操業し、1日当たり1千〜4千箱を水揚げした。今期は累計150トンの水揚量(2019年・2020年の約半分)で、11月末には早くも終漁した。なお、過去最高の2,300トンの水揚量を記録した2017年は、今年同様に日本海全域で、夏以降は平年より2〜3℃高い水温が続いた。そのため、稚内以北まで群が北上し、更に群が濃かったことから好漁に繋がった(8月と10月に盛漁期があった、図4)。今期は同様に夏場は高水温であったが来遊量自体が少なく、低調な漁で終わったともの思われる。

Cオホーツク海〜根室海峡
 オホーツク海〜根室海峡の3港(羅臼・網走・紋別)の生鮮スルメイカの11月末の累計水揚量は1,600トンで、2016年以降ではややまとまった(図6)。特に羅臼では、スルメイカは定置網主体に累計1,100トンで、前年の5倍の水揚量があった(2000年の3.4万トンが過去最高)。秋鮭が1,900トン(9月中旬〜10月中旬)で前年比26%増、9〜13kg級のブリ主体に660トン(10月中・下旬)、マサバ1,600トン(11月下旬。前年は累計で10トン)と、今期は短期間に複数の魚種のまとまった漁獲がみられた。

D三陸  三陸の生鮮スルメイカの11月末の累計水揚量(図7, 8)は4,400トンで、前年の1/3と他の海域同様に低調だった。特に八戸沖の大中型まき網によるスルメイカの水揚量は、今期は86トンで、昨年同期1,400トンの6%に過ぎなかった。一方、沖合底曳網(石巻・宮古・八戸等)によるスルメイカの水揚量は、まき網や釣りなどと比べ、減少幅は小さかった。石巻の沖合底曳網のスルメイカの11月の水揚量は360トンで、前年同月の6割減であった。

2.生鮮スルメイカの月別平均価格の推移

 2021年11月の生鮮スルメイカの月別平均価格は675円/kgで、水揚量が少なかったため、10月から2割上げ、前年同月並みで推移した。調整品を除くスルメイカ系いか類の1〜10月の累計輸入量は6.6万トンで、2019年及び2020年同期の1割増と引き続き輸入が多かった。このうち、中国からのスルメイカやアルゼンチンマツイカ等の輸入が全体の半数を占め、ペルー(アメリカオオアカイカ)等が続いた。輸入量が多いため、生鮮スルメイカの価格は2016年や2019年の800円/kg台までは上昇しなかった(図9)。

3.冷凍スルメイカの月別水揚げ状況

 主要港における冷凍スルメイカの2021年11月の水揚量は400トンで、前月の7割減、前年同月の6割減であった(図10)。11月は時化による休漁が多かったため、操業日数が大きく減少し、群が薄かったこともあって、水揚げは低調であった。11月末の累計水揚量は5千トンで、2019年及び2020年同期を上回ったものの、2018年同期1万トンの5割に留まった(図11)。

4.冷凍スルメイカの月別平均価格の推移

 冷凍スルメイカの11月の月別平均価格(図12)は691円/kgで、10月の660円台から5%上昇した。輸入物が多かったため、昨年同期並みの価格帯で推移した。

5.今後の動向等について

 スルメイカは漁期終盤となり、生鮮・冷凍とも水揚げは極めて低調である。漁期終盤ではあるが、年明けの1〜4月に富山湾の定置網では、2020年・2021年と2年続けて1400トンのまとまった入網があった。沖の滞留群が、海面水温の降温とともに遅れて南下したと思われる。おさかなひろばの集計には、富山湾では魚津以外含んでいないが、おさかなひろばの全国の年間集計の1割に相当する。これから、スルメイカ漁の端境期で、さらに水揚げの少ない時期となる。このことから、今後、富山湾のスルメイカ定置網漁の動向や、年明けから三陸近海で始まる中型いか釣り船(船凍船)による冬季アカイカ漁の動向にも期待したい。

   (水産情報部)
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