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vol.1042

11月の近海カツオ竿釣り漁場と生鮮カツオの水揚状況について

1.近海竿釣り船の漁場

 11月の近海竿釣り漁は延134隻で前年より多く、気仙沼港への水揚げは11月15日の3隻をもってほぼ終了した。11月の平均漁獲量は2.9トン/隻・日(1日最大11.0トン)で、10月より減少したものの前年同月(1.5トン/隻・日)を上回った。主漁場は房総〜常磐の沿岸寄りで(図1b)、黒潮系暖水が北上する海域だった(図2a,b)。このため、漁場の平均水温は21.8℃で前年(19.3℃)よりやや高かった。例年、東北沖145〜150°E周辺海域は脂の乗った下りガツオを狙うが、今年は前月に東北沖で群れが薄かったため、今月はほとんどの竿釣り船が沖合への出漁を控えた。

2.水揚量と価格

 沿岸の海面水温20℃以上の海域が主漁場となったことで、脂の乗りは9月の東北沖の太ったカツオよりはやや控えめであったが、鮮度の良いカツオが水揚げされた。
 全国の11月の釣りによる生鮮カツオ水揚量は754トンで、前年(948トン)より少なかったが、過去5年平均並みだった(図3a)。今年の全国水揚量は10月末までで4万トンを上回り、今月はそれに上乗せとなって年間累計水揚量は近年では豊漁となった(図3b)。JAFICの集計では生鮮カツオの年間累計水揚量は今年も気仙沼港が最も多かった。2021年のカツオ漁については、JAFICホームページに掲載予定の年間取りまとめ情報(前年の情報:「2020年の我が国周辺の漁海況の経緯と特徴について」https://www.jafic.or.jp/information/2020/12/23/507/)を参照されたい。
 価格は前月よりさらに上昇し、前年同月を上回る470円/kgで過去5年平均並みまで回復した(図4)。新型コロナの規制措置の緩和や解除が進み、外食需要が増加したことにより、冷凍加工向けの相場から生鮮向けの相場になったとみられる。

3.今後の見通し

 例年、近海カツオ竿釣り船の漁期は11〜12月に終り、早い船は翌1月末ごろに出漁する。2022年の漁期開始時期は、燃油費の高騰に加えて、小笠原諸島の海底火山の噴火による軽石の日本近海への来遊の程度、新型コロナの感染予防のための水際対策強化にともなう海外からの乗組員の入国への影響など、懸念材料が多い。このため、例年どおりの出漁となるかどうか注視したい。
 一方、今年は高知県近海で沿岸小型竿釣りが例年になく好漁であったほか、若干ではあるが日本海側へ回遊したカツオもあった。このため、地域によっては冬場も美味しいカツオに出会える機会があると思われる。
 来年の日本近海のカツオ漁況は予測が難しいが、海況はカツオの来遊に好適な状況が続くと期待されている。現在、量は少ないものの南方海域で見られている小型のカツオが、来年日本近海へも来遊することを期待したい。

   (水産情報部)
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