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vol.1032

10月におけるサンマの漁況経過

1. 2021年10月の漁況の経過

 今年10月のサンマ棒受網における生鮮サンマ水揚量は4,177.0トンで、前年(10,979.5トン)の38%であった(表1)。9月の水揚量をやや下回っており、10月になっても水揚量は増加しなかった。前年は記録的な不漁であり、10月の水揚量が1971年以降で最低であったが、今年は前年をさらに下回り、過去最低の水揚量となった。生鮮サンマの平均価格は723円/kgで前年の1.37倍であった。
 10月上旬の主漁場は、前年同期よりも東側の公海である落石東南東230〜260海里(漁場水温12〜17℃)、落石東360〜520海里(漁場水温12〜16℃)であった(図1、2)。また落石南南東190〜200海里にも一時的に漁場が形成された。1日1隻当たり最高漁獲量は、落石東360〜520海里で31トン、他の漁場は数トンであり、9月下旬よりも少なくなった。漁獲物は体重100〜120gモードであり、9月下旬とほぼ同じであった。  10月中旬の主漁場は、前年同期よりも東側の公海である落石東南東240〜290海里(漁場水温11〜16℃)、落石東450〜480海里(漁場水温12〜14℃)であった。また、花咲港より1日程度の落石東南東沖(漁場水温11〜13℃)、落石南南東200海里〜久慈東190海里(漁場水温15℃)にも一時的に漁場が形成された。1日1隻当たり最高漁獲量は、落石東南東240〜290海里で23トン、落石東450〜480海里で16トン、他は0.2〜数トンであり、10月上旬よりさらに低下した。漁獲物は、体重110〜130gモードであり、10月上旬よりもやや重くなった。
 10月下旬の主漁場は、前年同期よりも東側の公海である落石東南東240〜280海里(漁場水温12〜17℃)、落石東南東290〜東450海里(漁場水温11〜15℃)であった。また、落石南南東190〜210海里(漁場水温14℃)にも一時的に漁場が形成された。1日1隻当たり最高漁獲量は、落石東370〜450海里で66トンであり、ようやくまとまった漁獲ができるようになった。漁獲物は、体重110〜140gモードであり、10月中旬よりもさらに重くなった。

2. 2021年10月の漁獲物

 今年の10月中旬の漁獲物は、体長29〜30cm、体重110〜130gモードであった(図7)。漁獲物によっては体長25〜26cm、体重60〜70g台が混じった。前年の同期の漁獲物は体長29〜30cm、体重110〜130gモードであった(図8)。前年と比べると、今年は0歳魚が混じる他は、1歳魚の体長組成、体重組成はほぼ同じである。10月15日夜の漁獲物について、体長と体重の関係を前年と比較すると、1歳魚の太り具合は、前年とほぼ同じであった(図9)。
 今年の10月下旬の漁獲物は、体長30〜31cm、体重130〜140gモードであった(図10)。前年の同期の漁獲物は体長29〜30cm、体重110〜120gモードであった(図11)。前年と比べると、今年の魚体はやや大きい。10月下旬(今年10月27日夜、前年10月25日夜)の漁獲物について、体長と体重の関係を前年と比較すると、同じ体長における1歳魚の太り具合は、前年に比べて10gほど太っている(図12)。

3. 現状分析と今後の見通し

 今年は9月21日夜に花咲東南東300海里付近に南下群が出現した。南下群の出現時期は、前年よりも約8日早かった。例年、南下群が出現すると、後続の魚群が続き漁獲が上向く。しかし、今年は10月上旬に台風16号から変わった低気圧の影響で海が時化た後、魚群が散ってしまい、その後魚群がまとまらない状況となり、どこに行ってもサンマがいない状況が続いた。このため、10月の水揚量が伸び悩み、過去最低の水揚量となった。
 10月25日夜に、ようやく1日1隻当たり最高で66トン漁獲され、新たな南下群が出現した。この南下群の出現場所は、花咲東400〜430海里であり、非常に遠い場所であった。以降、11月中旬に至っても主漁場はこの付近である。この新たな南下群の太り具合は前年よりも良く、体重130g以上が5〜6割程度を占めている。また0歳魚の混じりが少ないのが特徴である。
 今後、これらの魚群が徐々に西へと移動してくるであろう。0歳魚の混じりが多くなると、そろそろ南下群が途切れるイメージとなるが、現在はそのような状況にはなっていないため、もうしばらく漁場は持続する可能性がある。一方、漁場が遠く、1週間に1回程度しか水揚げできない状況が続いていることから、前年と比べて水揚量が少ない状況が続いている。今後は、時化の影響がどの程度となるか、漁場がいつ頃近づいてくるか、12月に入っても漁獲が続くかが焦点となる。前年よりも魚体は良いことから、水揚げが増えることを期待したい。

   (水産情報部)
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