10月の近海竿釣り漁は延515隻、平均漁獲量は3.5トン/隻・日(1日最大32.0トン)で、9月より大きく減少し、前年同月(4.0トン/隻・日)を下回った。漁場の平均水温は21.6℃で前年(21.3℃)と同程度だったが、漁場位置は前年より岸寄りで房総〜宮城県の沿岸寄りであった(図1)。気象庁の三陸沖の下層観測によれば、東北沿岸の39°N付近まで高温・高塩分の黒潮系暖水が北上しており、この水塊にカツオ漁場が形成されていた。前年も沿岸のカツオ漁場は房総〜常磐にみられたが、主漁場は黒潮続流の第1の北上部(144°E付近)の東側の水温20℃以上の海域であった。本年10月は十分な生餌が確保できなかったために出漁が一時制限されたが、沿岸に漁場が形成されたことで操業回数は前年より多かった。
旬別にみると、上・中旬は脂の乗った戻りガツオを狙って青森県沖150°E周辺に探索へ行った漁船もあったが、漁獲がまとまらなかったために沿岸主体の操業となった(図2a、b)。下旬は宮城県沖・青森県沖で群れが少しまとまり、沖合での操業がやや増加した(図2c)。
体長(尾叉長)のモードは沿岸寄りの漁場は53cm(図3a)、沖寄りの漁場は51cmで(図3b)、どちらも中型主体で、沖合はやや小型ながらも脂乗りが良かった。
全国の10月の釣りによる生鮮カツオ水揚量は2,100トンで、前月から半減し、前年同月より少なかった(前年同月比70%)(図4a)。年間の累計水揚量は前月にすでに直近の豊漁年である2018年を上回っており、10月はさらに上乗せとなり、今年の全国水揚量は4万トンを超える見込みだ(図4b)。価格は10月に急上昇し、前年同月より高い351円/kgで、今年最高だったが同月の過去5年平均価格までは回復しなかった(図5a)。
東北沖でのカツオ狙いのまき網漁は10月初旬に気仙沼中心に水揚げしたのちにほぼ終漁した。まき網の水揚量も前月よりも大きく減少したが、前年同月・過去5年同月平均より多かった(図5b)。東北沿岸寄りの漁場が10月も継続したためとみられる。
11月に入ってからさらに脂乗りのいいカツオが水揚げされ、今年最高の値がついた。水揚量は多くなかったため、今年のおいしいカツオに巡り合えた消費者は幸運だったかもしれない。11月中旬現在、東北沖での群れは見られなくなってきており、本年の竿釣り漁は数隻を残してほぼ終漁した。一方、四国周辺ではカツオの漁獲が続いているため、今後も西日本ではカツオの水揚げが続くとみられる。