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vol.1029

令和3年10月の海況について

黒潮域

・2017年秋季に始まった大蛇行は短期間の中断があったものの、4年目に突入して、1975年から5年続いた大蛇行に迫る期間に近づいている。
・黒潮流路は、都井岬はやや接岸し、足摺岬はやや離岸したが、9月からの変動は小さかった(図1-@)。大蛇行流路の南端(図1A)は前月よりさらに南下が進み、29°N付近まで南下した。
・御前崎沖では蛇行北上部の屈曲(図1-A)が強まり、遠州灘〜熊野灘に暖水が波及し、近年より1〜2℃高めになった。
・黒潮流軸より南側の海面水温は、9月下旬から降温が始まり、九州〜四国は27℃、潮岬〜房総半島沖は25〜26℃に降温した。
・沖縄東沖〜関東沖の海域(図1-B)は台風14号や台風20号の影響で降温が進み、近年より1℃前後低めであった。

親潮域・混合水域

・8月上旬に房総半島沖で黒潮続流と結合した冷水渦は沖合に流され、不明瞭となり消滅した。
・常磐〜金華山沖は広範囲に黒潮続流から暖水が波及(図1-C)し、海面水温は近年より1℃弱高めであった。
・三陸南部沖では黒潮続流から暖水が波及し、暖水渦E(図1-E)が発達中。
・津軽暖流系水と一体化した三陸北部沖の暖水渦C(図1-C)はほぼ同じ位置に停滞した。
・9月に釧路南東沖で発達した暖水塊D(図1-D)もほぼ同じ位置に停滞した。
・三陸や道東沖(図1-E)は台風や前線及び親潮系水の影響で、海面水温は近年より2℃前後低めであるが、道東沖合では黒潮続流からの暖水波及(図1-D)の影響で低めの海域は縮小傾向。
・親潮面積は10月も平年(1993〜2017年)より小さい状態が継続した。
・親潮第1分枝は釧路沖付近まで後退し、第2分枝は41°30′N・148〜149°E付近に後退した。

東シナ海

・北部や大陸側を中心に降温が進み、下旬には海面水温20℃以下の海域も現れた(図1-F)。
・海面水温は全域で1℃前後高めであるが(図1-2F)、下旬は風が強く日射も少なかった影響で高めの海域は縮小した。

日本海

・上旬は高気圧に覆われることが多く、期間を通して東朝鮮暖流の勢力も強く、日本海北部〜朝鮮半島付近(図1-G)の海面水温は9月に引き続き高めの状態が続き、近年より2〜4℃高めであった。しかし下旬は寒気の影響で高めの海域は縮小した。
・対馬暖流は隠岐諸島沖で蛇行して(図1-H)、大和堆付近を通過後、若狭湾沖で再び大きく蛇行(図1-I)する流路をとった。これらの蛇行の影響で、隠岐諸島沖(図1-H)や若狭湾沖(図1-I)には冷水が南下して海面水温は近年より弱い低めになった。
・対馬暖流の勢力は9月に引き続いて平年(1993〜2017年)より強めの状態が継続した。

〇10月の海面水温の推移

・上〜中旬は各海域とも降温の程度(図3)は近年平均(2011〜2020年)より弱かったが、中〜下旬は降温が進み、大和堆海域(図2-@)の降温の程度(図3)は近年平均を上回り、道東(図2-A)、三陸沖合(図2-C)も降温の程度は近年並まで回復した。
・しかし、道東沖合(図2-B) は暖水渦D(図2-1D)の影響もあり下旬も降温の程度(図3)は近年平均より弱かった。
・11月上旬は入り、各海域とも降温が停滞し、降温の程度(図3)は近年平均よりやや弱めになり、各海域ともに水温は近年平均より0.5℃程度高めであった。

今後1ヵ月程度の海面水温の推移

・1)各海域とも降温の程度が近年平均よりやや弱い、2) 親潮面積が平年より小さい、3)気象庁の季節予報によると北日本は12月上旬までは平年より高めの可能性が高い、以上から各海域の海面水温は近年並〜1℃程度高めで推移する見込みである。

三陸〜常磐海域への親潮系冷水の南下

・2021年11月上旬現在(図2-1)は三陸北部沖に暖水塊C、釧路南東沖に暖水塊Dがみられ、三陸南部沖にも暖水塊Eが発達しつつある。
・2020年11月下旬(図2-2)は暖水塊Gが2021年の暖水塊C、暖水塊Hは2021年の暖水塊D、暖水塊Iは2021年の暖水塊Eに相当する位置にみられた。
・2020年11月下旬(図2-2)は暖水塊GとIが離れており、勢力も2021年より弱かったため、親潮系冷水が暖水塊の間を南下し、三陸海域まで達していた。
・しかし、2021年11月上旬(図2-1)は暖水塊の勢力が強く、接近しているため、三陸海域には親潮系冷水が接岸しにくい海況である。
・気象庁TESAC報の11月11〜14日の常磐北部〜仙台湾付近の下層観測データでは、この海域の100m程度まで高温・高塩分の黒潮系水に覆われており、親潮系冷水はほとんど観測されていない。
・以上より、三陸〜常磐沿岸には親潮系冷水は接岸しにくく、南下も2020年より遅れる見込みである。

   (海洋事業部)
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