9月の近海竿釣り漁は延468隻、平均漁獲量は9.3トン/隻・日(1日最大46.5トン)で、前年(平均4.0トン/隻・日、1日最大25.0トン)よりも好漁だったが、前月より減少した。漁場は宮城県沿岸〜沖合148°E付近、青森県沖合150°〜153°E周辺で(図1)、漁場の平均水温は20.7℃で前月(22.6℃)よりやや低水温の海域で漁場が形成された。
旬別にみると、上旬から中旬は宮城県沖・青森県沖の黒潮続流の北側に波及した暖水の縁とみられる水温20℃前後の海域で操業した(図2ab)。下旬は青森県沖150°E周辺にまとまった漁場が形成され、東北の沿岸寄りでは分散して広範囲で操業が行われた(図2c)。
体長(尾叉長)のモードは沖寄りの漁場は51cm(図3a)、沿岸寄りの漁場は52cmで、どちらも中型主体でほぼ変わりなかったが(図3b)、竿釣り漁船への聞き取りによれば沿岸寄りでは「大」も混じった。
全国の9月の釣りによる生鮮カツオ水揚量は5,870トンで、前月と同程度、前年より好漁(前年同月比191%)だった(図4a)。9月までの累計水揚量は3.7万トンで、2016年以降で最も多かった2018年の年間水揚量(3.6万トン)を9月時点で上回る好漁となった(図4b)。
まき網による生鮮カツオ水揚量は2,130トンで、前月(3,570トン)より減少したが、前年同月(1,300トン)を上回り、過去5年平均も大幅に上回る好調だった(図5b)。東北沿岸寄りにカツオが多く来遊し、まき網の好漁場が形成されたためとみられる。
生鮮カツオの全国平均価格は、釣りが184円/kg、まき網が232円/kgで、釣りでは前月からほぼ変わらず低迷が続き、まき網はやや上昇したが前年・過去5年平均よりも安かった(図5b)。
気仙沼魚市場において9月24日と10月8日に水揚げされたカツオの胃内容物を調査したところ、イサダ(ツノナシオキアミ)が確認された(図6)。イサダを摂餌したカツオは脂の乗りが良いといわれており、9月下旬から10月上旬頃は関東の小売店でも比較的脂の乗りが良いカツオが購入できた。
10月中旬時点でまき網船のカツオ主体の操業は減少し、生鮮カツオの水揚げの主体は、竿釣りとなっている。竿釣り船の漁場は沖合150°E周辺では群れがまとまらず、東北沿岸寄りでの操業が主体となっている。気仙沼港から漁場が比較的近いものの、生餌のイワシ類の供給が不足しており、延べ出漁隻数が減少している。また、10月下旬現在、漁場が常磐沖へと徐々に南下するとともに、1隻1航海当たりの水揚量も減少傾向にあり、カツオの南下回遊がはじまっているとみられる。カツオの竿釣は例年11月でおおよそ終漁するため、美味しい生鮮カツオの時期も残りわずかだ。
(水産情報部)