・9月も大蛇行流路が継続し、1975年から5年続いた大蛇行に次ぐ長期の大蛇行となっている。
・黒潮流路は、九州〜四国沖では8月よりやや離岸し(図1-@)、蛇行部(図1-A)はやや西に移動するとともに南下が進み、最南下部は29〜30°Nに達した。
・蛇行部の西進とともに、蛇行北上部の屈曲が強まり、遠州灘〜熊野灘に暖水が波及し、海面水温は近年より1℃前後高めになった。
・黒潮流軸付近の海面水温は、関東以西は9月上〜中旬に好天が続いたため28〜29℃に昇温し、近年より1℃弱高めであった。一方、関東沖(図1-C)は中旬の台風14号の通過や前線が停滞した影響で27℃台に降温して、近年より1℃前後低めであった。
・黒潮以南(図1-B)も好天の影響で海面水温が昇温し、30℃台もみられ、近年より1℃前後高めであった。
・8月上旬に房総半島沖で黒潮続流の流軸と結合した冷水渦Fは黒潮続流により流されて沖合(図1-F)に移動した。
・冷水渦Fの沖合への移動とともに常磐沿岸への暖水波及は解消し、常磐沿岸の海面水温は前線の停滞等の影響で近年よりやや低めであった。
・一方、冷水渦Fの周辺では巻き込まれた暖水が金華山沖まで北上して、海面水温は近年よりやや高めであった。
・三陸北部沖の暖水渦C(図1-C)は停滞し、津軽暖流系水と一体化した。
・釧路南東沖では暖水塊は8月に消滅したが、南からの暖水の張り出しが成長し、新たな暖水塊D(図1-D)が発達した。
・三陸〜道東沖(図1-E)の海面水温は、低気圧や前線の影響で、近年より2℃前後低めの状態が広範囲で継続した。しかし、親潮面積は、平年(1993〜2017年)より小さい状態が継続した。
・親潮第1分枝が41°30′N・145°E付近まで後退し、第2分枝は40°N・147〜148°E付近に停滞した。
・海面水温は、9月中旬に台風14号の影響で降温したが、好天が多く、下旬には北部で昇温した海域もあり、全般に近年より1℃前後高めであった。
・対馬暖流の主流路(図1-G)は多少の変動はあったが、大和堆付近を通り、能登半島沖で蛇行する経路が継続した。
・対馬暖流の主流路以南(図1-H)の海面水温は、8月の台風や前線停滞の影響が残り、9月上〜中旬は近年よりやや低めであったが下旬には解消した。
・中〜北部は好天が続き、海面水温は近年より1〜2℃高めの状態が継続した。
・9月中旬に台風14号、10月初めに台風16号が沖縄東沖〜関東東海沖〜三陸〜道東沖を通過した。
・台風16号の通過によって本州南方や道東〜三陸沖の海面水温は、台風の経路に沿って9月下旬より最大で約4℃、おおむね2〜3℃降温した(図2-3)。この結果、近年と比べても、本州南方で1〜2℃、三陸〜道東沖で2〜4℃低めとなった(図2-2)。
・日本海側はこれらの台風の影響はなく、10月上旬現在の海面水温は全域で近年より高め(図2-2)である。大和堆海域(図2-@)では10月上旬に近年より約1.5℃高めとなっている(図3)。
・道東海域(図2-A)や道東沖合海域(図2-B)および三陸沖合海域(図2-C)は、台風や前線の影響があったものの、三陸北部の暖水塊Cや釧路南東沖で新たに発達中の暖水塊Dの影響があり、平均海面水温は10月上旬現在に近年並となっている(図3)。
・三陸〜道東沖合は現在のところ近年並で推移している(図3)。しかし台風による降温があったものの、9月中旬以降の降温の程度は近年平均より弱く(図3)、釧路南東沖暖水塊Dが発達中であることや千島列島北東沖周辺が近年より高めであることから、近年並〜1℃程度高めで推移すると考えられる。
・日本海も、10月上旬現在は全域で近年より高めであることや、9月中旬以降は降温の程度が近年平均より弱いことから、1℃前後高めで推移すると考えらえられる。