今年8月のサンマ棒受網における生鮮サンマ水揚量は853.2トンで、前年(173.6トン)の4.9倍であった(表1)。前年は記録的な不漁であり8月の水揚量が1971年以降で最低、前々年(910.7トン)は過去2番目に水揚量が少なかった。今年は前年を上回ったものの、前々年を下回った。生鮮サンマの平均価格は488円/kgで前年の36%であった。
今年は7月に流し網が1隻出漁したが、漁獲なし。例年8月1日に10トン未満船が解禁となるが、今年はロシア主張200海里内での操業を9月から行うこととしたこともあり、サンマ狙いの出漁は無かった。
8月11日に10トン以上20トン未満船が解禁となり、時化明けに5隻程度出漁。15日夜~16日夜に花咲東南東670~700海里の公海で漁獲。一部の船が19日に花咲港3.3トン、厚岸0.15トン水揚し、今年のサンマ初水揚げとなった。
8月15日に20トン以上100トン未満船が解禁となり、公海に向けて14隻程度出漁し、17~19日夜に花咲港東南東660~670海里の公海で漁獲。23日に花咲港および厚岸港に水揚げした。
100トン以上の大型船は、8月20日に出漁し、花咲港東南東沖の公海、小型船が操業した漁場へ向かった。大型船の初水揚げは8月27日となった。
今年8月の主漁場は、花咲港東南東420~500海里、花咲港東南東560~580海里、花咲港東南東600~720海里であった(図1)。前年同様、漁場が遠いため、小型船の多くは出漁できなかった。漁場水温は、16~19℃と高かった。
前年の8月の主漁場は、花咲港東北東750~780海里の公海で、漁場水温は主に13℃台であった(図2)。また花咲東南東300海里、花咲東南東860海里の漁場水温18~19℃台にも1日のみ漁場が形成された。今年は前年よりも漁場はやや西側であったものの、漁場水温は今年の方が高い。
今年の大型船の初水揚であった花咲港東南東630海里の漁獲物は、体長29cm、体重100~120gモードであった(図3)。前年の同期の漁獲物は体長29cm、体重110~120gモードであった(図4)。前年と比べると、今年は体長組成はほぼ同じであるが、体重100g台の個体が多い。8月24日夜における漁獲物について、体長と体重の関係を比較すると、今年は前年に比べて体重が10g程度軽く、今年の方が若干痩せている(図5)。
国立研究開発法人 水産研究・教育機構が今年6~7月に行ったトロール調査で採取されたサンマの個体数は、前年を上回ったものの、2019年を下回り、引き続き極めて低い水準であった。今年8月の水揚量は、この調査結果を反映したものとなった。
今年の漁場は前年よりやや西側であったものの、漁場水温は今年の方が高い。今年7月中旬~8月上旬は表層水温が非常に高目であった。この影響で、上記トロール調査時に水温が低い場所に分布したサンマは、漁船が操業できる場所よりも北に移動したため、今年は漁期当初から水温が高い場所にいるサンマを狙うしかなかったものと思われる。この時期、水温が高い場所にいるサンマは痩せている。このため、今年の漁獲物は前年に比べて体重が10g程度軽くなっているものとみられる。
現在漁場に分布しているサンマは南下を開始している魚群ではない。そのため漁場での魚群の分布量が少なく群れも極めて薄いため、網数が非常に多くなっている。前年は、9月下旬になって太った南下を開始したと考えられる魚群が出現した。今年も、今後しばらくは魚群がまとまらずにかなり不安定な漁場形成となるであろう。一方、上記トロール調査で、水温が低い場所で採集されたサンマの太り具合は前年よりも良かった。このことから、南下群が出現すると、前年より太っているサンマとなり、また漁獲もまとまりやすくなると思われる。期待して待ちたい。