8月の近海竿釣り漁は延315隻の出漁となり、2018年以降の同月の出漁隻数としては最も少なかった。台風の影響とみられる。一方、平均漁獲量は13.0トン/隻・日(1日最大50.0トン)で、前年(平均4.8トン/隻・日、1日最大31.0トン)よりも好漁だった。漁場は全体的に前月より北上し、漁場の平均水温は22.6℃で前年同月(26.1℃)より低かった(図1)。前年は相対的に高水温に分布する大型のカツオが多く来遊し漁獲対象となったため、漁場水温が例年より高かったが、今年は2019年以前と同様に「小」〜「中」カツオ主体となっているため、漁場水温は前年より低くなった。旬別にみると、上旬は東北沖の24℃以上の海域で操業され、中旬は漁場の緯度はほぼ同様であるが東北沖の海面水温が低下し、22℃前後の海域で操業された(図2)。下旬になると三陸沖の水温低下が顕著になり、漁場はやや南下し、黒潮続流の北側に波及した暖水の縁とみられる、20~22℃の海域に操業が集中した。
魚体は体長(尾叉長)モード52cmで、中型主体だった2019年8月(モード48cm)よりやや大きかった(図3)。
全国の8月の釣りによる生鮮カツオ水揚量は4,590トンで、操業隻数が少なかったこともあり前月(10,480トン)より半減した。しかし、前年より好漁で(前年同月比124%)、8月までの累計水揚量は2016年以降で最も多かった(図4, 5左)。
まき網による生鮮カツオ水揚量は3,840トンで、前月(4,390トン)よりやや減少したが、前年同月を上回り、過去5年平均も上回り好調だった。カツオの来遊量が多く、まき網の好漁場が比較的沿岸に形成されたためとみられる。(図5右)。
生鮮カツオの全国平均価格は、釣りが184円/kg、まき網が195円/kgで前月からほぼ変わらず低迷が続いている(図5)。新型コロナウイルスへの対策により、飲食店需要が回復しないためか、生鮮の取り扱いが減少し、生鮮より値段が安い冷凍での取り扱いが増加しているとみられる。
8月末に黒潮続流の北上の峰は38°N、145°E付近であったが(図2c)、9月に入り北上の峰はなだらかになるとともにやや沖合化し、38°N、146°Eに暖水渦がみられ、現在はこの暖水渦の北側が漁場となっている。また、40°N、152°E周辺にも暖水渦がみられ、その北側にも漁場が形成されている。この二つの暖水渦はしばらく残るとみられ、これらの渦の北側の海面水温20℃前後の海域が今後漁場となっていくとみられる。
今年はこれまで好漁が続いており、9月中旬時点で全国の月別水揚量は前年同月の水揚量を上回っている。カツオの回遊の妨げとなる要因も今のところ見られないため、引き続き秋も近年では比較的好漁となりそうだ。主要水揚港である気仙沼では、カツオの脂乗りがよくなってきているとの情報もあり、戻り(秋)ガツオの旬を楽しみたい。