主要港における生鮮スルメイカの7月の水揚量は1,367トンで、6月の1,702トンから2割下回った。また、2010〜2020年平均の6,313トンのわずか2割で、2010年以降、最低であった(図1)。なお、本年8月のデータは、8月25日現在の途中集計である。
2021年1〜7月の水揚量は4,964トンで、前年同期の半分、近年最多の2010年の2.9万トンの2割であった(図2)。この不漁の原因として、2016年以降資源量水準が低いことに加え、日本海全域及び三陸〜道東の太平洋側で、海面水温が平年より高い状態が7月中旬〜8月上旬に顕著だったことが考えられる。具体的には、今年のこの高水温は大型低気圧の通過が少なかったため、日本海・道東〜三陸では7月中旬は平年差5〜6℃高、7月下旬は平年差6〜7℃高であった。この海面水温の高水温の状態がスルメイカの北上を妨げ、不漁となったと考えられる。8月上旬になると台風9号の通過があり、平年差3〜5℃高に降温、さらに台風10号通過後の8月中旬以降は、概ね平年並みの海面水温となった。このことにより、日本海の大和堆の中型いか釣り船(船凍船)や道東や青森太平洋側の小型いか釣り船の昼いか漁模様が好転した。
日本海の能登半島沿岸(越前〜輪島)では、5月に入ると例年通り漁場が形成され、主力の金沢港では小型いか釣り船が、6〜7月中に1日あたり50〜100隻が水揚げした。しかし、上述の高水温の影響で群が全般的に薄く、水揚箱数は1日あたり4千〜5千箱と、例年に比べると1/2〜1/3の低調な水揚げに留まった。
本年7月の金沢港の水揚量は718トンで前年7月の3割、2010〜2020年7月の平均2.8千トンの2割減(図3)。1〜7月の累計水揚量は、好調だった昨年は4,817トンで、今期は2,270トンと半減した(図4)。
新潟以北では群が薄く、新潟県内の小型いか釣りの7月の水揚量は180トンで、前年の1/3、平年の7割であった(図5)。1〜7月の累計水揚量も300トンで前年の半分、5年平均の1/3であった(図6)。山形県内の5〜7月の延べ水揚隻数は244隻で前年の1/4、平年の1/3であった。水揚数量は65トンで前年の1割強、平年の2割とさらに低調。青森の日本海側は、今期はほとんど漁獲がなかった。
道南の桧山管内も低調で、1日当たり水揚隻数は8月上旬に20隻から40隻に倍増し、1千〜2千箱/日と一時的に上向いたが、8月下旬には600〜1千箱/箱に低下した(25尾入3割、30尾入6割、バラ1割)。日本海北部の小樽管内はさらに来遊が少なく、管内全体で1日当たり1〜3隻が数箱の水揚げ(30〜40尾入)。小樽管内の8月24日現在の今期の累計水揚量は88トンで、前年同期193トンの45%に留まった。
一方、三陸の小型いか釣り漁は、青森県太平洋側の昼いか釣り漁は昨年並みの漁獲であった。白糠港・泊港は各40隻程度が、各2千箱/日を水揚げ。三沢港では50〜70隻/日が操業しており、多い日には5千〜6千箱とまとまった。八戸港も8月下旬には30〜40隻が昼いか釣り漁を行っており、約2千箱/日の水揚げがみられた。しかし、8月前半までは低調な漁獲でかつ休漁も多く、水揚げの伸びを欠いた(図7)。なお、八戸沖では例年7月中旬以降は、まき網漁によりさば類混じりでスルメイカの漁獲を行っており、年間2千数百トンが漁獲されている。スルメイカの来遊量は年々少なくなっており、漁獲量も減っている。今期はまだ漁獲がない。
道東の根室(花咲港)では例年8月から水揚げが始まる(図8)。本年は8月4日に1隻10箱の初水揚げがあり、8月17日以降、海面水温の低下(道東沿岸は21℃から15℃に低下)とともに漁獲がまとまり、8月下旬には50〜70隻が6千〜1万1千箱(34〜67トン)と、好漁が続いている。厚岸港で8月17日に小型いか釣り(昼釣り)11隻が発泡21箱・コンテナ93箱を初水揚げ、羅臼港でも8月27日に小型いか釣り2隻が発泡63箱・コンテナ41箱を初水揚げした(昨年より2日遅い)。
日本海の中型いか釣り船によるスルメイカ漁は、6月上旬に十数隻が大和堆に出漁したがスルメイカの群が見られなかったことから、山口県見島沖に廻りシロイカ(ケンサキイカ)漁を行ったほか、小型いか釣り船の主漁場であった能登半島・輪島沖合でスルメイカ漁を低調ながら行った船が見られた。7月上旬になると大和堆で1日1隻あたり300〜900箱(2〜7トン)と群がまとまり、台風通過に伴う時化休みを挟みつつ、8月下旬現在も良い船で1日1隻当たり400〜600箱(3〜5トン)の好漁が続いている。高水温のため、沖合を北上した群が多かったと想定される。今期、太平洋の沖合のアカイカ漁には約27隻が出漁したが、漁獲量が後半に低下し、好調だった昨年の半分の漁獲量に留まった。このため、アカイカ漁の二次航海に出漁したのは2隻程度で、他の船は日本海のスルメイカ漁に切り替えた(約40数隻が操業中)。
例年9月になると三陸の沖合底曳網漁が禁漁期間を終え、漁を再開する(八戸・宮古・石巻等)。近年、三陸沿岸の海面水温が高いことから、夜間表面に浮上してこないスルメイカ潜行群を漁獲対象とした底曳網と昼いか釣り漁の好漁が見られる。8月現在好漁が見られる道東のスルメイカ漁(釣り・定置網)にも期待したい。
(水産情報部)