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vol.938

令和2年9月の海況について

1.  9月の海況概要

〇東シナ海〜黒潮域
・2017年秋に発生した黒潮大蛇行は9月も継続し、発生から3年が経過した。
・黒潮の流路は、九州〜四国及び熊野灘〜遠州灘付近で流軸が大きく離岸(図1A)し、御蔵島付近を通過するU字型の流路(図1B)をとった。最南下緯度は29〜30°N付近であった。
・本州南方沖(図1C)では、1982年以来最も高温(気象庁統計資料による)であった8月に引き続き、30℃以上の高温水が分布した。
・平均海面水温は沖縄周辺では28〜29℃、九州〜四国沖は27〜28℃、伊豆諸島付近は28〜29℃に降温した。九州〜四国沖は冷水渦や台風9・10号が通過した影響で前年より1〜2℃前後低めで、東シナ海北部(図1F)も台風9・10号が通過した影響で1〜2℃低めであった。

〇親潮域・混合水域
・黒潮続流は、前月とほぼ同じ37°N付近まで北上していたが、下旬にかけて変動が大きくなった。
・常磐北部〜三陸〜北海道沖では、142〜145°Eを20℃以上の暖水が釧路沖まで北上した。
・釧路南沖には前月に比べれば降温したが、依然として18℃以上の暖水塊が形成されていた。この暖水塊は前年より接岸しており、道東沿岸の海面水温(図1D)は1〜2℃高めであった。
・三陸北部〜北海道東方沖(図1E)は平年より日射が少なく風が強かった等、気象の影響もあり前年より低めであった。
・親潮は明確な沿岸分枝はなく、沖合分枝は41〜42°N・147〜148°E付近が南限であった。9月も親潮の面積は平年より小さい状態が続いた。

〇日本海
・日本海西部(図1F)は台風9・10号が通過した影響で前年より2〜3℃低めであった。
・北陸沿岸は、27℃以上の暖水に覆われて前年より1℃前後高めであった。

2. 今年4回目の黒潮蛇行からの冷水渦切離

〇6月下旬〜7月上旬の黒潮蛇行からの冷水渦切離、7月下旬〜8月上旬及び8月下旬〜9月上旬の冷水渦の切離と再結合に引き続き、9月末〜10月初めにかけて今年4回目の冷水渦の切離が起こった。
・9月上旬〜下旬の前半は9月の海況概要のとおり、黒潮蛇行はU字型の安定した流路であった。しかし、9月下旬の後半になると九州東沖の冷水(図2-1A)が発達して明確な冷水渦になると共に、黒潮蛇行がくびれ始めた(図2-1B)。
・10月1日には、九州東沖の冷水渦(図2-2A)は拡大し、蛇行のくびれが強まり(図2-2B)、逆Ω型の特徴的な経路になった。
・10月5日になると、九州東沖の冷水渦(図2-3A)は維持され、蛇行はくびれの部分がくっ付いて、蛇行の南方に冷水渦(図2-3B)が切り離された。蛇行は室戸岬沖と大王埼沖に峰の部分があるM字型の経路となった。
・10月15日現在、台風14号通過に伴う水温低下もみられるが、切離された冷水渦(図2-4B)は10月5日より黒潮流軸から若干離れている。
・今のところ、切離された冷水渦と黒潮流軸は離れていく傾向にあるので、7月下旬〜8月上旬及び8月下旬〜9月上旬のような冷水渦の再結合は起こらないと思われる。しかし、九州東沖の冷水渦が今後、東進して再び大蛇行に移行する可能性がある。これらの冷水塊の今後の動きを注意してみていきたい。

   (海洋事業部)
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