近海カツオ竿釣りの漁期序盤(1〜3月)の漁場は、近年は小笠原諸島から伊豆諸島に形成されてきた。
この漁場は、地球温暖化の影響を受けてか、近年は北上が年々早くなる傾向にあったが、本年の1月は操業がなかった(図1)。
2月は例年、小笠原諸島の南東沖に主漁場が形成されるが、本年はこの海域でほとんど操業がなく、
奄美〜薩南海域が主漁場となった(図2)。また、漁獲は極めて低調だった。
小笠原諸島周辺では南西沖に漁場が形成されたものの、漁獲は奄美〜薩南海域より更に低調であった。
2月の全海域の1日1隻当り平均漁獲量は、1.6トンで前年(5.9トン)を大きく下回った。
なお、前年の主漁場は小笠原諸島沖であるが、奄美〜薩南海域においても、図2には漁場がプロットされていないものの、操業が行われた。
3月の主漁場は、沖縄、奄美、薩南、九州南東岸となり、伊豆諸島付近でも漁場が形成された(図3)。
漁獲は2月よりやや上回ったものの依然として極めて低調であり、全体の1日1隻当り平均漁獲量は、2.1トンで前年(4.2トン)を下回った。
また、例年3月に漁獲されるビンナガはほとんど漁獲されなかった。
4月前半の主漁場は、伊豆諸島付近となった(図4)。伊豆諸島北部ではビンナガ主体となり、漁獲はようやく上向いて、
ビンナガ・カツオを含む全体の1日1隻当り平均漁獲量は4.6トンとなり、前年(2.3トン)を上回った。
また、熊野灘沿岸では今年も漁場が形成され、ビンナガ主体となった。
熊野灘沿岸では、前年4月中旬〜6月下旬にカツオ・ビンナガ漁場が形成され、これは平成2年以来、29年ぶりとなる珍しい事象であったが、
本年も同海域に漁場が形成され、2年連続となった。
昭和47年以降のJAFICの海況図と漁場プロット図を検討した結果、4〜6月に黒潮流路がA型の大蛇行で、
遠州灘から熊野灘にかけて黒潮反流があり、かつその表面水温(以下同様)が19℃以上の年が、今年を入れて8年あった。
この8年とも熊野灘沿岸にカツオ竿釣り漁場が形成されている。
なお、上記の条件以外でカツオ竿釣り漁場が形成された年が3年あり、この3年は、@黒潮本流が潮岬に接岸し、
熊野灘に21℃の黒潮反流、A黒潮流路がC型の蛇行で熊野灘に20℃の黒潮反流、B黒潮本流が熊野灘に接岸(20℃)、の3パターンであり、
いずれも19℃以上の黒潮反流もしくは黒潮本流が熊野灘に接岸しており、これらの条件の年は、熊野灘沿岸にカツオ竿釣り漁場が形成され易いと言えそうだ。